研究課題
本研究の目的は、iPS細胞技術を利用し、iPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞を生体に移植することによって、腎性貧血の生理的な改善を可能にすることである。平成25年度は、前年度までに確立した技術によりヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞を分化誘導し、産生されたエリスロポエチンの機能評価を行うことを計画していた。研究の結果、ヒトiPS細胞から分化誘導されたエリスロポエチン産生細胞は、生体内と同様に低酸素下でエリスロポエチンの産生と分泌を増加させ、また分泌されたエリスロポエチンは臍帯血から得られた造血幹細胞であるCD34陽性細胞を赤芽球系へ誘導した。この結果はiPS細胞から誘導されたエリスロポエチン産生細胞が、貧血改善機能を有する可能性が高いことを示唆している。ヒトiPS細胞から貧血改善効果のあるエリスロポエチン産生細胞を分化誘導したという報告は、私が検索した限りこれまでない。そのため、これまでの研究成果で確立したエリスロポエチン産生細胞の分化誘導法は、基礎研究においてはエリスロポエチン産生・分泌の機序解明に大きく貢献すると考えられ、また臨床応用としては、渇望されるヒトiPS細胞を用いた生理的な腎性貧血治療を提供できると考えている。現在、ヒトiPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞を生体に移植すること目的に研究を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に予定していた研究内容については、ほぼ全て終了しており概ね予想された結果を得ることができた。得た知見をもとに測定系などを流用し、平成26年度に計画している研究内容に関しても一部予備実験を既に開始している。現時点では、研究計画の立案に際し問題になると予想された点についても順調に遂行できている。そのため交付申請書に記載された研究目的に対する達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。
これまでの研究計画に関しては、おおむね順調に推移している。平成26年度以降は、ヒトiPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞をモデル動物への移植する実験を計画している。腎性貧血モデル動物に関しては、これまでに構築したシステムを利用し、既に予備実験を開始している。予備実験から得られた結果からは、エリスロポエチン産生細胞は腎性貧血を改善する効果を有する可能性を示唆している。この予備実験結果の確証を得るように平成26年度は研究を行う。研究を遂行する上で課題が生じた場合には、研究計画書に挙げた対策に沿って研究を行う予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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