研究課題
本研究の目的は、iPS細胞技術を利用し、iPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞を生体に移植することによって、腎性貧血の生理的な改善を可能にすることである。研究の結果、ヒトiPS細胞由来エリスロポエチン産生細胞の分化誘導法を新規に開発し、産生されたエリスロポエチンの機能評価を行った。ヒトiPS細胞から分化誘導されたエリスロポエチン産生細胞は、生体内と同様に低酸素下でエリスロポエチンの産生および分泌を増加させ、また分泌されたエリスロポエチンは臍帯血から得られた造血幹細胞であるCD34陽性細胞を赤芽球系へ誘導した。この結果はヒトiPS細胞から誘導されたエリスロポエチン産生細胞が、貧血改善機能を有する可能性が高いことを示唆していた。またエリスロポエチン産生細胞の細胞上清は、市販のエリスロポエチン製剤に比較して慢性腎不全マウスの腎性貧血を高効率に改善した。ヒトiPS細胞から貧血改善効果を有するエリスロポエチン産生細胞を分化誘導したという報告は、私が検索した限りない。そのため、これまでの研究成果で確立したヒトiPS細胞由来エリスロポエチン産生細胞の分化誘導法は、基礎研究においてはエリスロポエチン産生・分泌の機序解明に大きく貢献すると考えられる。また臨床応用としては、渇望されるヒトiPS細胞を用いた生理的な腎性貧血治療を提供できると考えている。現在、ヒトiPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞の臨床応用を目的に研究を継続している。
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