研究課題
基盤研究(C)
慢性腎不全モデルラットに対するセリンプロテアーゼ阻害薬の効果を検討する予備実験を行った結果、降圧、タンパク尿減少、血清Cr値の改善が得られることが判明した。これらの知見は、セリンプロテアーゼ群が高血圧症の発症やタンパク尿の発現に大きく関与していること、すなわちCKDの進展に対してセリンプロテアーゼ群が重要な役割を果たしている可能性を強く示唆するものである。そこで、私は6週齢のSDラットの左腎を2/3切除し、その2週間後に右腎を全摘して5/6腎摘ラットモデルを作製し、その1週間後から経過観察を開始した。0、4、8、12週の時点でラットを堵殺して腎組織からタンパク質を抽出し、Double Layer Fluorescent Zymography法(DLFZ法)により解析し、慢性腎不全群において特異的に活性が亢進するセリンプロテアーゼを複数同定した。次に腎臓抽出タンパク質をイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーにより粗精製し、DLFZ法によって同定した酵素活性を指標にしながら目的のセリンプロテアーゼの粗精製分画を得た。そのタンパク質を2D gelにより分離し、DLFZ法を用いてバンドまたはスポットを同定してLC-MS/MS等のプロテオミクス解析を行ったところ、既知のセリンプロテアーゼを複数同定できた。今後は、そのセリンプロテアーゼの発現量の変化やタイムコースを検討する予定である。さらに、in vitroでの、そのセリンプロテアーゼの機能を解析する予定にしている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、慢性腎不全モデルラットにおいて発現の上昇するセリンプロテアーゼを同定できたから。
平成24年度に同定したセリンプロテアーゼに特異的な阻害薬がある場合は、5/6腎摘モデルラットにその特異的阻害薬を投与し、血圧、タンパク尿、腎組織障害などに与える影響を検討する。特異的serpinが存在する場合は、serpinの投与またはserpinの過剰発現マウスなどを用いて、同様の検討を行う。knockoutマウスが利用可能であれば入手し、野生型およびKOマウスに5/6腎摘を作製して、KOマウスにおいて血圧、タンパク尿、腎組織障害の軽減が認められるか否かについて検討する。セリンプロテアーゼは多くの場合、一連の活性化カスケードを形成して生理学的役割を担うことが知られている。そこで、当該セリンプロテアーゼの上流および下流に位置するセリンプロテアーゼについて5/6腎摘ラットにおける活性測定や発現調節を検討する。同時に、当該セリンプロテアーゼのserpinが明らかな場合はそのserpinの発現状況についても検討を加える。
該当なし
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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