研究課題
昨年度の研究成果で、慢性腎不全モデルラットの腎組織において活性が亢進するセリンプロテアーゼを発見した。本年度はこのセリンプロテアーゼが慢性腎不全の病態進展に関与しているかどうかについての検討を行った。慢性腎不全モデルラットの腎組織を硫安沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーによって粗分画し、目的とするセリンプロテアーゼの存在する分画をzymographyによって確認した。その後、その分画を用いて既存のセリンプロテアーゼ阻害薬による活性抑制実験を行った。その結果、アプロチニンやメシル酸カモスタットなどのセリンプロテアーゼインヒビターによってそのセリンプロテアーゼの活性が抑制されることが確認された。また、メシル酸カモスタットが濃度依存的にこのセリンプロテアーゼ活性を抑制することも確認した。活性抑制効果を持つ薬物のうち、メシル酸カモスタットのみが経口投与可能であったため、続いてin vivoにおける慢性腎不全進展抑制効果について検討を加えた。9週齢のSDラットを用いて5/6腎摘を行い、コントロール群およびメシル酸カモスタット投与群に分け、12週間観察を行った。その結果、メシル酸カモスタット群において著明にタンパク尿が減少し、血清Cr値の上昇も抑制されていることが明らかとなった。血清Cr値の上昇抑制は10週目の時点で観察されたが、このタンパク尿減少効果は8週目の時点で観察されていた。すなわちこのセリンプロテアーゼがタンパク尿の発症抑制に関与していることが示唆された。今後はこのセリンプロテアーゼがタンパク尿発症にかかわる機序について検討を進める。
2: おおむね順調に進展している
慢性腎不全の進展にかかわるセリンプロテアーゼとその阻害剤を見出し、in vivoにおいて慢性腎不全の進展抑制効果が確認できたので、おおむね順調に研究は達成されていると考えております。
今後は、今回同定したセリンプロテアーゼがどのようなメカニズムでタンパク尿の発症に関与しているかと同定することによって慢性腎不全の進展抑制のための治療法開発につなげたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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