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2013 年度 実施状況報告書

プロテアーゼおよび酸化ストレスによるヴィシャスサイクルメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24591207
研究機関熊本大学

研究代表者

白石 直樹  熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (40423660)

キーワードセリンプロテアーゼ / プロスタシン / 線維化 / 酸化ストレス / 腎不全 / 糖尿病 / インスリン抵抗性
研究概要

昨年度、慢性腎不全モデルに合成セリンプロテアーゼ阻害薬であるcamostat mesilate(CM)を投与し、セリンプロテアーゼが線維化の促進を介して腎不全を進行させている可能性を示した。セリンプロテアーゼの腎線維化における役割を詳細に検討するために、尿細管間質の線維化モデルである慢性片側尿管結紮(UUO)ラットを用いてCMの効果を検討したところ、CM投与群では優位に腎線維化が改善した。その機序としては、CMはマクロファージ浸潤やTGF-β産生ではなく、線維芽細胞におけるTGF-β受容体活性化あるいはそれ以降のシグナリングを抑制することにより腎線維化を抑制していた。驚くべきことに、このCMの腎線維化抑制作用は、UUO作成後7日目にCM投与を開始した群、すなわちある程度腎線維化が進行した群においても効果を示し、CMが実臨床においても腎不全に対する新しいクラスの薬剤となる可能性が示された(Am J Physiol F173-181, 2013)。
また、我々は、セリンプロテアーゼの一つであるプロスタシンが肝臓に多く発現していることに着目し、肝臓におけるプロスタシンの生理的役割を検討した。肥満により肝プロスタシンの発現は低下する。肝臓特異的にプロスタシン遺伝子を欠損させたマウスは糖尿病を発症したが、その機序として、プロスタシンはリポ多糖(LPS)の受容体であるToll様受容体4(TLR4)を切断することにより肝臓に過度な炎症が生じることを抑制する生理的役割を持っており、プロスタシン欠損により肝臓に炎症が生じてインスリン抵抗性が低下し、糖尿病発症につながることが分かった。肝プロスタシンの発現低下が、肥満における糖尿病発症において重要な役割を果たしていることが解明されたという点において、臨床的にも非常に重要な発見となった(Nat Commun, 2014)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

慢性腎不全モデルにおいて、合成セリンプロテアーゼ阻害薬であるcamostat mesilate(CM)を用い、セリンプロテアーゼが腎障害を促進するメカニズムを検討し、上皮細胞の障害にセリンプロテアーゼが関与していること、また炎症性サイトカインの産生や線維化にも関与していること、そして腎障害時の酸化ストレス産生にも関与していることを示した。また、尿細管間質の線維化モデルである慢性片側尿管結紮(UUO)ラットを用い、CMは、マクロファージ浸潤やTGF-β産生ではなく、線維芽細胞におけるTGF-β受容体活性化あるいはそれ以降のシグナリングを抑制することにより腎線維化を抑制することを明らかにした。さらに、UUO作成後7日目にCM投与を開始する群でもこのCMによる腎線維化抑制作用を確認し、CMが実臨床において、ある程度腎障害が進行した例に対しても有効な薬剤となる可能性が示した。
また、肝臓での役割が全く不明であったプロスタシンが、リポ多糖(LPS)の受容体であるToll様受容体4(TLR4)を切断することにより肝臓に過度な炎症が生じることを抑制する生理的役割を持っていることを明らかにし、肥満による糖尿病において、肝プロスタシンの発現低下が重要な役割を果たしていることを示した。これは非常に重要な発見であり、研究はおおむね順調に進行していると言える。

今後の研究の推進方策

現在行っている種々培養細胞を用いたin vitroでのプロテアーゼが酸化ストレスを誘導するメカニズムについて、プロテアーゼ阻害薬のみならず、SiRNAによる個別蛋白のノックダウンなどの方法を利用して検討をさらに進める。また、in vivo SiRNAシステムを用いて、各種動物モデルにおけるin vivoでの個別のセリンプロテアーゼノックダウンの影響を検討し、またプロスタシン過剰発現マウスおよびプロスタシン臓器特異的ノックアウトマウス、プラスミノーゲンノックアウトマウスなどのプロテアーゼ関連遺伝子組み換えマウスなどにおける腎障害進展機序について検討する。さらに、プロテアーゼ阻害薬と抗酸化薬併用投与や、既存の腎保護薬であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬であるACE-Iやアンギオテンシン2受容体阻害薬などとの併用による組織障害への効果の検討およびその効果的投与方法などについても検討し、実際の臨床応用につなげていく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] The serine protease prostasin regulates hepatic insulin sensitivity by modulating TLR4 signalling2014

    • 著者名/発表者名
      Uchimura K, Hayata M, Mizumoto T, Miyasato Y, Kakizoe Y, Morinaga J, Onoue T, Yamazoe R, Ueda M, Adachi M, Miyoshi T, Shiraishi N, Ogawa W, Fukuda K, Kondo T, Matsumura T, Araki E, Tomita K, Kitamura K
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: Epub ahead of print ページ: on line

    • DOI

      10.1038/ncomms4428

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Amyloid A amyloidosis in a Japanese patient with familial Mediterranean fever associated with homozygosity for the pyrin variant M694I/M694I2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamura T, Migita K, Ando Y, Takaoka H, Suzushima H, Shiraishi N
    • 雑誌名

      Mod Rheumatol

      巻: 24 ページ: 349-352

    • DOI

      10.3109/14397595.2013.852844

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Prevalence and risk factor analysis of nephrosclerosis and ischemic nephropathy in the Japanese general population2013

    • 著者名/発表者名
      Shiraishi N, Kitamura K, Kohda Y, Iseki K, Tomita K
    • 雑誌名

      Clin Exp Nephrol

      巻: Epub ahead of print ページ: on line

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The antifibrotic effect of a serine protease inhibitor in the kidney2013

    • 著者名/発表者名
      Morinaga J, Kakizoe Y, Miyoshi T, Onoue T, Ueda M, Mizumoto T, Yamazoe R, Uchimura K, Hayata M, Shiraishi N, Adachi M, Sakai Y, Tomita K, Kitamura K
    • 雑誌名

      Am J Physiol Renal Physiol

      巻: 305 ページ: F173-F181

    • DOI

      10.1152/ajprenal.00586.2012

    • 査読あり
  • [学会発表] CKDに対するメシル酸カモスタット(CM)とARBの腎保護効果の検討2013

    • 著者名/発表者名
      植田美紀、内村幸平、成田勇樹、水本輝彦、尾上友朗、山添リカ、森永潤、早田学、白石直樹、實吉拓、安達政隆、酒井芳紀、冨田公夫、北村健一郎
    • 学会等名
      第56回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム
    • 年月日
      20130510-20130512
  • [学会発表] 維持血液透析患者における血清Angptl2値と動脈硬化の関係2013

    • 著者名/発表者名
      山添リカ、森永潤、内村幸平、早田学、尾上友朗、水本輝彦、植田美紀、安達政隆、白石直樹、實吉拓、田尻宗誠、尾池雄一、冨田公夫、北村健一郎
    • 学会等名
      第56回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム
    • 年月日
      20130510-20130512

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公開日: 2015-05-28  

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