慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の病態における慢性的な低酸素状態並びにこれに密接に関連する虚血、貧血、酸化ストレスの、CKD進行のfinal common pathway、腎臓と全身諸臓器相互の病態的連関及び保存期CKDのリスク管理における意義を臨床的、基礎的に検討した。 臨床的検討としてCKD及びそのハイリスク患者コホートで、酸化ストレスバイオマーカーを含む各種臨床的指標の収集と睡眠呼吸障害のスクリーニングを実施、観察を継続し、皮膚AGEsがCKD5Dにおいて心血管予後を予測する優れたバイオマーカーとなることを示した。 基礎的検討として、methylglyoxal(MGO)慢性投与によるラット尿毒症モデルを用いて認知機能につき2種の行動実験(物体探索試験および放射状迷路試験)を用いて空間認識機能を評価したが、明らかな認知機能障害を認めず、海馬ならびに大脳皮質の器質的障害も証明されなかった。本病態モデルにおいては一定の条件内でのMGO投与下ではsuperoxide dismutase、glutathione peroxidase活性など抗酸化系の賦活による生体内レドックス制御機構が作動している可能性が示唆された。さらに、ラット片側腎虚血再灌流モデルを用いて腎虚血と遠隔臓器障害の病態とその制御について病理組織学的、生化学的検討を行い、HMGCoA還元酵素阻害薬(statin)による虚血腎以外の炎症制サイトカイン、酸化ストレスマーカーの発現低下を認め、腎虚血の関連病態におけるstatinの臓器保護的作用が示唆された。
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