マウスES細胞から腎臓尿細管細胞への分化誘導系が確立し、PlosOne誌に発表した。将来的な臨床応用を考え、ヒトES細胞からの尿細管細胞への分化誘導をおこなった。マウスES細胞とヒトES細胞では、ヒトES細胞の方が分化誘導の高率が悪く、時間がかかるので、マウスES細胞とは異なり、GSK-3β-阻害剤を用いて一旦中間中胚葉への分化誘導をおこなうことで、比較的短時間で分化させることが可能であることが分かった。その後、マウスES細胞と同様に、KSP(Kidney specific protein)抗体を用いて、KSP養成分画をフローサイトメトリーで分取し、ヒトES細胞からのKSPを指標とした尿細管細胞への分化誘導方法が確立できた。現在、論文投稿誌、リバイス実験を行っている。 前年度までの研究において、腎尿細管障害の抑制に関与するmiRNAとして、miR-34cがEMT(上皮間葉転移)を抑制することを明らかにし、Scientific Reportsに受理された。さらに、マイクロアレイを用いた網羅的な解析の中から、EMTに関連するmiRNAとして候補にのぼっていたmiR-363について解析をおこなった。miR-363はmiR-34cとは逆に、尿細管細胞のEMTを促進することが示唆された。miR363のシグナル伝達においては、TWIST1/2が重要であることまで突き止めたが、今後、この部分についてさらに研究を進めていきたい。
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