研究概要 |
IgA腎症の病態における糖鎖異常IgA1(GdIgA1)産生と免疫複合体形成機序を解明するために、まずIgA腎症患者の末梢血および摘出された扁桃よりB細胞を抽出し、EBウイルスで不死化し、IgA1-およびIgG産生細胞株を樹立した(各n = 5)。これらの細胞株に対し、IL-1, -2, -4, -5, -6, -10, TNFα, TGFβ, IFNγ等の種々のサイトカインの刺激によって、IgA1の糖鎖構造・糖鎖修飾酵素の活性化やIgG産生細胞株でのGdIgA1特異的IgGの産生が亢進するか否かを検証した。特にIL-6の刺激により、ガラクトース欠損型、およびシアル酸過付加型のGdIgA1の産生が亢進することが示され、粘膜での感染によって、これら免疫複合体を形成するIgA, IgGが産生されることが示された。 本症における扁桃B細胞の役割を解明するため、2012年から2013年までに当院にて扁摘およびステロイドパルス療法が施行されたIgA腎症患者25名を対象とし、扁摘前・扁摘後・ステロイドパルス療法経過中の血中のバイオマーカー(GdIgA1、GdIgA1特異的IgG、およびIgG-IgA免疫複合体)を測定した。また、摘出された扁桃細胞を48時間培養し、培養上清中のGdIgA1およびGdIgA1特異的IgGの産生量を測定した。尿所見異常の改善に伴い、血中GdIgA1・GdIgA1特異的IgG ・IgA1-IgG ICの有意な低下が認められ、扁摘パルス療法の治療効果が高い患者群での扁桃細胞では、糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生量が有意に高値であった。以上より、IgA腎症の病態において重要な役割を担うGdIgA1やGdIgA1特異的抗体の一部は、口蓋扁桃由来であることが示唆された。血中バイオマーカーは、扁摘パルス療法の適応と治療効果判定に応用できると考えられた。
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