研究概要 |
IgA腎症の病態における糖鎖異常IgA1産生と免疫複合体形成機序を解明するために、IgA腎症患者の末梢血および摘出された扁桃よりB細胞を抽出し、EBウイルスで不死化し、IgA1-およびIgG産生細胞株を樹立した。これらの細胞株に対し、IL-1, -2, -4, -5, -6, -10, TNFα, TGFβ, IFNγ等の種々のサイトカインの刺激によって、IgA1の糖鎖構造・糖鎖修飾酵素の活性化が亢進するか否かを検証した。二次的な感染によるIL-6やIL-4の刺激により、ガラクトース欠損型、およびシアル酸過付加型の糖鎖異常IgA1の産生が亢進することが明らかとなり国際誌に発表した(J Biol Chem. 21: 5330-5339, 2014)。またサイトカインの刺激によって免疫複合体形成を亢進させるようなIgGが産生されるか否か、IgG産生細胞株を用いて解析を行っている。 本症における扁桃B細胞の役割を解明するため、2012年から2014年までに当院にて扁摘およびステロイドパルス療法が施行されたIgA腎症患者30名を対象とし、扁摘前・扁摘後・ステロイドパルス療法経過中の血中のバイオマーカー(糖鎖異常IgA1、糖鎖異常IgA1特異的IgG、およびIgG-IgA免疫複合体)を測定した。また、摘出された扁桃細胞を48時間培養し、培養上清中の糖鎖異常IgA1および糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生量を測定した。尿所見異常の改善に伴い、血中糖鎖異常IgA1・糖鎖異常IgA1特異的IgG ・IgA1-IgG ICおよび尿中糖鎖異常IgA1値の有意な低下が認められ、扁摘パルス療法の治療効果が高い患者群での扁桃細胞では、糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生量が有意に高値であった。以上より、IgA腎症の病態において重要な役割を担う糖鎖異常IgA1や糖鎖異常IgA1特異的抗体の一部は、口蓋扁桃由来であることが明らかとなった。扁桃B細胞におけるtoll-like receptor, B cell activating factorなどの発現亢進が糖鎖異常IgA1あるいは糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生に寄与しているか現在解析をすすめている。
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