研究概要 |
糖尿病患者におけるビタミンD受容体遺伝子FokIと腎機能及び血清の25OHD、1,25(OH)2Dとの関連性を明らかにするために410名の糖尿病性腎症の患者を対象に解析を行った。CKD stageはeGFRで分類し、血清25OHD及び1,25(OH)2Dの濃度とFokI(rs10735810)の遺伝子多型を以下の因子(年齢、性別、BMI、糖尿病罹患歴、ACE阻害薬・ARBの内服の有無スタチンの内服の有無、ビタミンD製剤の内服の有無、カルシウム、リン、血糖、HbA1c、iPTH)により補正しロジスティク回帰分析を行った。その結果、①腎機能とFokI遺伝子多型には明らかな相関性はみられなかった。②eGFRと1,25(OH)2D濃度、25OHD濃度との関連性がみられた。③1,25(OH)2D濃度とeGFRとの関連性はFokICC+CT(r=0.75)においてFokITT(r=0.64)よりも明らかであった。COS-7細胞にFokIT対立遺伝子およびC対立遺伝子を導入した場合、FokICC群はTT群に比べて、ビタミンD-24水酸化酵素のmRNAの転写が2倍高く、このVDRのalleの違いがビタミンD代謝に影響を与えている可能性が報告されている。今回、我々の研究においては1,25(OH)2D濃度とeGFRにおける関係性はFokICC+CT群においてFokITT群よりも強く認められた。すなわち、同程度の腎機能ではFokITT群において1,25(OH)2D が高値であり、 VDR FokI多型 が、1,25(OH)2Dの代謝に影響を与える可能性がある。本研究の対象患者を今後、数年間観察し、心血管イベント、透析導入などのイベント及び腎機能の推移を確認する予定である。
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