研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病腎症進展にリン代謝がどの様に関わっているかを明らかにするための研究である。リン代謝を制御するビタミンDとFGF23に着目して検討を行った。平成24年度は、我々は、糖尿病腎症患者400例の前向きコフォートを用いて、ビタミンD受容体のFokI遺伝子多型が腎機能増悪と関連することを報告していた(Yokoyama K . PLoS One 2012;7(2) e51171.)。線形回帰分析の結果で血清補正Caと血糖コントロールの指標であるHbA1cは正の相関を示し、25OHDとHbA1cは正の相関を示していた。ビタミンDのCaを上昇させる作用とプレオトロピック効果を分離できる化合物に大きな期待が寄せられている。 平成25年度、我々は、筑波大との共同研究でビタミンDのCaを上昇させず、ノンジェノミック作用を有する新規ビタミンD類似化合物を開発した。本化合物は腎臓の線維化抑制をすることを報告し、特許申請を行った。(置換ジフェニルメタン酸誘導体を含有する医薬組成物、特願2009-057265)(Ito I, Yanagisawa J, Yokoyama K, JCI.2013;123(11):4579-4594.)。 平成26年度さらに、糖尿病腎症患者でFGF23を低下させる化合物としての新規P吸着薬であるクエン酸第二鉄の可能性を検討した。新規P吸着薬であるクエン酸第二鉄が、慢性腎臓病患者において、血清Pレベルだけでなく、腎機能低下の予知因子である血清FGF23レベルを低下させることを明らかにした(Yokoyama K, CJASN 2014;9(3):543-52)。 血清FGF23が介入によって下げることが可能であることが確認されたので、平成27年度は血清FGF23と糖代謝の関連について探索的な検討を行った。糖尿病腎症進展にリン代謝がどの様に関わっているかを明らかにするため、糖尿病腎症患者400例のBio-Plex法を用いた検討では、糖代謝ホルモンの一種であるresistinが骨・ミネラル代謝、特にFGF-23の濃度規定因子であることを見出した。
|