研究課題/領域番号 |
24591217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
清水 章 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00256942)
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研究分担者 |
永坂 真也 日本医科大学, 医学部, 助教 (00573239)
益田 幸成 日本医科大学, 医学部, 講師 (70173755)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 壊死性半月体形成性腎炎 / 抗好中球細胞質抗体 / ANCA / 糸球体腎炎 / 壊死性糸球体腎炎 / 半月体形成性糸球体腎炎 / ANCA関連血管炎 / ANCA関連腎炎 |
研究概要 |
本研究の目的は安定したANCA関連腎炎ラットモデルを用いて、ANCA関連腎炎の発症進展に関わる免疫学的機序を明らかにすることです。結果はANCA関連腎炎の病態や新しい診断方法、特異的な治療を開発することにつながります。今年度は1) 安定したANCA関連腎炎ラットモデルの作成方法を検討した。Wistar Kyoto (WKY) ラットにhuman MPO(hMPO: 400μg/kg body wt)を免疫する方法を原法とし、この原法に、高容量のhMPO免疫群 (800, 1600, 3200μg/kg)、免疫方法にboostの追加群について検討した。WKYラットへのhMPOの免疫方法は、精製したヒトMPO蛋白を完全フロイントアジュバント (結核死菌追加) と百日咳菌毒素とともに免疫した。1600μg/kgのhMPOの一回免疫でELISAでは充分な血清ANCA抗体価の上昇が得られたため、ANCA関連腎炎ラットモデルの作成には1600μg/kgのhMPOの一回免疫が適していた。間接法ではラット好中球にラット血清内のANCAが反応して、ヒトMPOに対する抗体がラット好中球に反応することを確認した。しかし、壊死性半月体形成性腎炎の形成頻度は数%に留まり、確実なモデル作成には、更なる工夫が必要であった。2)ANCA関連血管炎の発症・進展に、糸球体内のサイトカインが関与しているかを検討した。WKYラットに1600μg/kgのhMPOの一回免疫で8週後の腎機能・腎病理像・糸球体内サイトカイン (TNF-α, INF-γ, COX-2, NFkB, HO-1, CXCL-1, CXCL-2, IL-6)発現量を定量RT-PCRを検討した。糸球体内のいくつかのサイトカインには発現の差が認められた。ANCA関連腎炎の発症早期には糸球体内のサイトカインの発現が関与していると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は安定したANCA関連腎炎ラットモデルを用いて、ANCA関連腎炎の発症進展に関わる免疫学的機序を明らかにすることです。今年度は1) 安定したANCA関連腎炎ラットモデルの作成方法を検討した。1600μg/kgのhMPOの一回免疫でELISAでは充分な血清ANCA抗体価の上昇が得られたため、ANCA関連腎炎ラットモデルの作成には1600μg/kgのhMPOの一回免疫が適してることを明らかにした。さらに、間接法ではラット好中球にラット血清内のANCAが反応して、ヒトMPOに対する抗体がラット好中球に反応することを確認した。ここまでは、ANCA関連腎炎モデルの作成の基礎は作ることができたと考えている。しかし、壊死性半月体形成性腎炎の形成頻度は数%に留まり、確実なモデル作成には、更なる工夫が必要であることも確認ができた。さらに、ANCA関連腎炎の発症早期には糸球体内のサイトカインの発現の変化も確認ができた。今後のANCA関連腎炎ラットモデルの作成の基礎作りやその後の免疫学期な発症機序の解析のための基礎ができたので、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は安定したヒトANCA関連腎炎ラットモデルを用いて、ANCA関連腎炎の発症進展に関わる免疫学的機序を明らかにすることです。 1600μg/kgのhMPOの一回免疫でELISAでは充分な血清ANCA抗体価の上昇が得られ、形成されたANCAは、間接法ではラット好中球に反応するが、壊死性半月体形成性腎炎の形成頻度は数%に留まった。安定したANCA関連腎炎ラットモデルの作成方法をさらに検討する必要がある。1) 高容量のhMPO (1600μg/kg) の免疫に加えて免疫系を賦活化するためのLipopolysaccharide (LPS)の投与群を作成する。好中球を増加して活性化するためのG-CSF製剤投与群 ならびにPMA投与を追加群を作成する。高血圧の影響による増悪をみるためにSHRラットへの作成を行う。炎症を惹起することの増悪を確認するための少量抗GBM抗体の投与の影響を検討する。2) さらに、in vitroでのラット抗ヒトMPOに対する好中球の反応をヒト好中球と比較検討して、ANCAが高値にも関わらず壊死性病変が軽微な原因を追求する。3) 充分な壊死性半月体形成性腎炎の発症に至ったら、糸球体内サイトカインをはじめ、糸球体内炎症細胞浸潤の種類や、壊死性病変発症の特徴について検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はラットを用いて、ヒトMPOを免疫してANCA関連腎炎モデルを作成している。投与するヒトMPOの購入、腎機能や尿蛋白の測定、免疫系を賦活化するための薬剤も購入する。検討方法は、病理組織学的検討、免疫組織化学的検討、フローサイトメトリー、western blot、real-time PCR、を用いる。次年度の研究費は、実験動物の購入、浸潤炎症細胞の特徴や、産生サイトカインの解析のための各種抗体や消耗品に使用する。免疫寛容機序の検討のために、最初に網羅的な解析も予定しており、DNA arrayの解析のための消耗品にも使用する。研究のための情報収集、研究会や学会の参加やそのための旅費にも使用する。また結果の解析のためのコンピュータも購入の予定です。論文の作成には英文校正、投稿費や印刷代を含め、研究成果の発表のために使用する。
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