研究実績の概要 |
血清ANCAは存在するが、壊死性半月体形成性病変の頻度が数%程度であるhMPOの1600μg/kgを1回免疫するラットモデルに、さらにTNF-αやG-CFSを追加投与した好中球活性化誘導群と、単独では壊死性腎炎発症しない少量のanti-GBM抗体を追加投与した内皮細胞障害誘導群を作成し腎炎の増悪を試みている。今年度は、少量anti-GBM抗体投与による半月体形成の増悪機序の解明について検討した。1600μg/kgのhMPOの1回免疫群、好中球活性化誘導群、内皮細胞障害誘導群の間には血清ANCA値に差は認めないものの、少量のanti-GBM抗体追加投与群において有意な尿所見の増悪 (尿中アルブミン: 123.1 ± 54.5 mg/day)と、壊死性半月体病変の有意な形成率の上昇(55.0 ± 14.2 %)を認めた。半月体形成部位に Neutrophil Extracellular Trapsの好中球異常活性化像を認めた。少量anti-GBM抗体投与群においては、ラット血清でTNF-α, IL-1β, CXCL1, CXCL2の上昇が、単離糸球体内ではTNF-α, CXCL1, CXCL2, CXCL8の発現増加が認められた。ラット白血球を用いたin vitroでは少量anti-GBM抗体投与群からの精製ANCAによる好中球の活性化およびCXCR1, CXCR2の発現低下を認めた。半月体形成の増悪にはANCAの存在とともに、糸球体局所でのケモカイン発現上昇による好中球の集簇と、異常活性化した好中球が血管内で留まるための好中球膜上のケモカイン受容体の発現低下、ANCAによる好中球の異常活性化がみられた。半月体腎炎の増悪には、糸球体局所におけるANCA、血管内皮細胞と好中球との相互作用による好中球の異常活性化が重要であると考えた。
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