研究課題/領域番号 |
24591218
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
北田 宗弘 金沢医科大学, 医学部, 講師 (40434469)
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研究分担者 |
古家 大祐 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70242980)
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キーワード | 糖尿病腎症 / オートファジー / 栄養応答シグナル / サーチュイン |
研究概要 |
2型糖尿病腎症の発症・進展抑制に対する高度たんぱく質制限の腎保護効果と糖・脂質代謝に及ぼす影響を検証するため、2型糖尿病モデル動物である、Wistar fatty (fa/fa)ラット(6週齢雄)と対照ラットを通常食(たんぱく質22%、脂質5.4%、炭水化物66.5%)群とたんぱく質制限食(たんぱく質5%、脂質10%、炭水化物76.2%)群に分別し、28週間飼育した。体重・摂食量・血糖値(空腹/随時)・血圧を4週間ごとに測定し、28週後にHbA1C値・インスリン値・インスリン耐容能試験・脂質・尿アルブミン排泄量(UALB)・腎重量・腎組織(PAS、マッソン・トリクローム染色)を評価した。糖尿病ラットの両群間で摂食量に差はなかったが、通常食群と比較してたんぱく質制限食群で、体重および腎重量の有意な減少、血糖値・HbA1C値・IRI値の有意な低下、またITT(area under the curve)の改善を認めた。総コレステロール値は、通常食群と比較して、たんぱく質制限食群で有意な低下を認めたが、中性脂肪値は両群間で差はなかった。さらにたんぱく質制限食群は、通常食群と比較して、UALBの有意な低下と腎組織(メサンギウム領域拡大と尿細管間質線維化)の改善を認めた。なお、血圧に差はなかった。糖尿病腎症のどの時期からのたんぱく質制限の介入が腎保護効果を発揮するかどうかを検証すべく、6週齢からのたんぱく質制限に加え、12週齢および24週齢からのたんぱく質制限を開始する群を作成し、検討した。その結果、12週齢さらに24週齢のWistar fattyラットにおいてもたんぱく質制限は、糖尿病ラットにおいて認められるUALBおよび、糸球体・尿細管間質の線維化を抑制した。以上より、たんぱく質制限は、2型糖尿病ラットにおける糖・脂質代謝の改善と腎保護効果(発症・進展抑制)を示す可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療介入は6か月と長期にわたるが、順調にサンプルの収集ができている。尿アルブミン、組織学的にも高度たんぱく質制限が効果的である結果を得ているため、今後は収集したサンプルから機序の解明が可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に示した結果は、現在サンプル数を増やして実験を遂行している。高度たんぱく質制限による腎保護効果の機序としてのオートファジーの活性化の関与に関しては、腎尿細管における栄養感受性シグナルの変異に着目し、オートファジーの調節に重要な役割を果たすSirtuin、AMPKあるいは、mTOR経路について腎サンプル(蛋白・mRNA)を用いて、ウエスタンブロット、RT-PCR法、電子顕微鏡下における形態的なオートファジーの変異について検証している。さらに、ミトコンドリアの融合と分裂とオートファジーとの関連についても検証を行う。また、たんぱく質制限食は、2型糖尿病ラットにおいて、糖・脂質代謝を改善することを見出したが、その機序に関して、インスリン分泌能・膵β細胞、骨格筋におけるたんぱく質制限によるミトコンドリア機能・形態の変化を含むインスリン抵抗性に与える影響について引き続き検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
差引額989円とほぼ予定通り使用している。 本研究を遂行するために以下の研究費の使用計画を立案している。各群の動物飼育費用、治療用飼料費、組織染色関連物品費、電子顕微鏡関連物品費、栄養応答シグナルおよびオートファジーを検出するためのウエスタンブロット・PCR関連物品費、血液検査(糖・脂質関連)、尿検査(アルブミン、尿細管障害マーカー)のためのELISAキット費。
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