研究課題/領域番号 |
24591220
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70449891)
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研究分担者 |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
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キーワード | 腎臓 / 線維化 / 酸化ストレス / 細胞周期 / 老化 |
研究概要 |
腎線維化は進行性腎障害の重要な予後規程因子である。近年、尿細管上皮細胞のG2/M期での細胞周期停止が腎線維化進行に関連していることが明らかとなった。酸化ストレス条件下では、G2/M期の細胞周期停止に転写因子FOXOが関与する。FOXOは酸化ストレスの亢進によりWntシグナル下流の伝達蛋白であるβ-cateninと複合体を形成する。Wnt/β-catenin経路活性化は腎臓の発生段階だけでなく、腎障害の進展にも関与している。「酸化ストレス増加によるFOXO/β-catenin複合体形成増加が線維形成性サイトカイン分泌を増加させる」との仮説を立て、検証した。ヒト培養尿細管上皮細胞を、活性酸素 (100 μM過酸化水素) 存在下でWnt3a (50 ng/ml) の刺激を行った。活性酸素存在下ではWnt刺激により、FOXO3a/β-catenin複合体形成が増加した。通常Wnt3a刺激で活性化するTCF転写活性は、活性酸素存在下で低下し、Wnt3a刺激単独では活性化しないFOXO転写活性は、活性酸素存在下で増加した。また、GADD45、cyclin G2などG2/M期細胞特有の遺伝子発現が酸化ストレス下では増加し、G2/M期細胞の比率も増加していた。このG2/M期細胞ではTGF-βの発現、CTGFの発現が増加していた。酸化ストレス亢進によるJNK活性化がFOXO/β-catenin複合体形成を増加させ、G2/M期細胞の遺伝子発現増加に寄与していた。酸化ストレスは細胞のG2/M期での細胞周期停止と引き続く線維形成性サイトカイン分泌を増加させる。酸化ストレスの軽減が腎の線維化を軽減させる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いたin vitro実験は順調に進行している。遺伝子改変動物を用いたマウス動物実験は、現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
腎内Wntシグナル活性化部位を特定するために、BAT LacZマウスを用いる。酸化ストレス亢進状態時のWntシグナル変化を検討するために、高脂肪食およびWnt活性化のためのLiClを投与する。6カ月の長期投与後に組織を検討する。酸化ストレス軽減のため、抗酸化薬投与実験を計画中である。従って、今年度中の実験終了は困難であることが予想される。学会発表、論文作成は、研究進展具合を見計らって行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用予定であったマウスが予備実験で腎症発症が軽症であることが判明し、別のモデルマウスに変更した。このため、予定数のマウスを購入しなかったために次年度使用額が生じた。 in vivo実験のモデルを高脂肪食誘導性腎障害モデルに変更した。今年度の残額は高脂肪食購入費、およびマウス購入費、飼育費に当てる。
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