研究課題/領域番号 |
24591221
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
中島 衡 福岡大学, 医学部, 教授 (70188960)
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研究分担者 |
三宅 勝久 福岡大学, 医学部, 講師 (50448411)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | IgG4関連腎臓病 / Th1/Th2 バランス / 制御性T細胞 / 寄生虫感染 / ループス腎炎 |
研究概要 |
血清学的に高IgG4血症をもち、病理学的に病変組織中への顕著なIgG4陽性形質細胞浸潤を来たし、併せて特異の線維化を呈する全身性の多臓器障害性の疾患を全身性IgG4関連疾患(IgG4RD)と呼ぶことが提唱された。まず臨床上の問題点であるその診断に関して、我々はIgG4関連腎症(IgG4RKD)の診断基準を提示した。臨床検査上の所見、画像検査上の所見、血清IgG4高値、組織学的所見、さらに他臓器のIgG4RDの有無を鑑別点とする内容の診断基準である。この診断基準との合致程度で、確診、疑診と診断する。次に病因論的解析では、IgG4RKD生検腎組織からのサイトカインmRNAの発現を、他疾患間質性腎炎のそれと比較した。IgG4RKDではIL-4,IL-10とTGF-βが優位に産生され、Th2とTregが中心的に働いている病態であることが示された。この免疫状態が腎疾患にどのような変化を与えるかという観点から、SLEモデルMRL/lprマウスにマンソン吸虫を感染させ、腎臓の組織学的変化を解析した。寄生虫感染における体内サイトカインバランスはIgG4RKD同様の動態を示す。生後8週令で感染させたMRL/lprマウスは、32週には、WTに比してTh2偏倚の免疫反応を呈し、腎炎組織は、WTがびまん性増殖性変化を来すのに対し、膜性腎症を呈していることが明らかとなった。以前の研究でIL-27Rα欠損MRL/lprマウスも同様に、WTに比してTh2に偏倚した免疫反応を呈し、膜性腎症を呈していることを示したことから、遺伝的に、あるいは環境的に決定される個体のTh1/Th2バランスが、ループス腎炎の表現型決定の大きな要因であることが強く示唆された。この結果と同じように様に、間質性腎炎においてもTh2とTreg免疫反応にスフトするとIgG4RKDに認められる特異な病像を創りだすかは今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgG4RKDはTh2とTregが中心的に働いている病態であることが示されている。SLEモデルMRL/lprマウスに同様の免疫状態をつくりだし、その病態の変化を解析する計画した。寄生虫感染時の体内サイトカインバランスは、自然免疫の亢進とともにTh2とTregの機能亢進が認められる。MRL/lprマウスにマンソン吸虫を感染させ、腎臓の組織学的変化を解析し、表現型へどのような変化を与えるかを検討した。想定通りに32週令の感染マウスの腎炎は、非感染マウスがび漫性増殖性変化(DPLN)を来すのに対し、膜性腎症(MLN)を呈していることが確かめられた。以前の研究では、IL-27Rα欠損MRL/lprも同様に、WTに比して、Th2に偏倚した免疫反応を呈し、膜性腎症を呈していることを示したことから、今回の研究結果によって、遺伝的に、あるいは環境的に決定される個体のTh1/Th2バランスが、自己免疫性の腎炎の表現型決定の大きな要因であることが強く示唆された。臨床上、ループス腎炎患者の病状はDPLNとMLNで大きく異なることが示されてきたし、実際に感じてきた。その違いはそれぞれの患者個人における免疫反応の相違がつくりだす表現型の違いであることを今回示すことができたことは、大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
1. IgG4関連疾患における頻度の高い罹患臓器である唾液腺の病態を寄生虫感染MRL/lprマウスを用いて免疫組織学的に解析する。非感染のMRL/lprマウス唾液腺は、ヒトシェーグレン症候群類似の組織を呈することが示されている。これに対して、寄生虫感染マウスでは、ヒトミクリッツ病様の病態を呈するように変化しているのか?線維化の程度はどのように変化しているのか?などを解析する。 2. 寄生虫感染時のIgG4産生に中心的に関わると考えられるIL-10を抑えることで、野生型MRL/lprマウスの表現型へ戻るのか?この病態には、IL-10が中心的な役割を担っているのか?という疑問に対して、抗IL-10抗体の投与を試みる。 3. IgG4関連腎臓病と膜性腎症との免疫学的解析結果の類似点と相違点を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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