研究課題
基盤研究(C)
2型糖尿病による腎不全と高血圧発症機序として腎内選択的インスリン抵抗性、すなわち糸球体ではインスリンシグナルの障害および高血糖により血管内皮機能が低下するが、尿細管ではインスリンのNa再吸収亢進作用が保たれていることが注目されている。本研究の目的は腎内選択的インスリン抵抗性出現のメカニズムを明らかにし、これを標的とする新規治療法の開発を目指すことである。本年度はまず脂肪細胞および尿細管でのインスリンシグナルについて検討を行った。Wistarラットにおけるインスリンの精巣周囲脂肪細胞への糖取り込み促進作用はanti-IRS1 siRNAにより完全に抑制されたが、尿細管のNBCe1活性亢進作用はanti-IRS2 siRNAにより大半が抑制された。インスリン抵抗性を示すOLETFラットでは脂肪、肝臓、骨格筋のIRS1, IRS2 mRNA発現量が著明に低下しており、腎皮質のIRS1発現も低下していたがIRS2発現は保たれた。HOMA-IR 3.5以上のヒトインスリン抵抗性症例において腎臓周囲脂肪組織のIRS1, IRS2 mRNA発現は著明に低下し、腎皮質でもIRS1 mRNA発現は低下していたが、IRS2 mRNA発現は保たれた。これらの結果からインスリンの尿細管においてIRS2を介したNBCe1活性亢進作用がインスリン抵抗性の状態でも保持されることがNa貯留に関与していることが明らかになった。これらの成果を2012年11月米国サンディエゴで行われた米国腎臓学会Kidney Week 2012で発表しTop Oral Abstracts賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
尿細管ではインスリンによるNa再吸収亢進のシグナルはIRS2を介しており、インスリン抵抗性の状態においてもIRS2を介したシグナル伝達は抑制されないことが、インスリン抵抗性の状態でもNa貯留、高血圧に関与していることが明らかにされており、当初の計画をほぼ達成されていると考えられる。
本年度は前年度の成果を踏まえて、さらに腎尿細管でインスリンがNa貯留に関与するシグナルについて検討を行う予定である。肝臓においてインスリンはFoxO、TFE3などの刺激に対してSREBP1を介してIRS2の発現の抑制しているが、膵島β細胞ではこの経路によっては制御されていないとの報告がある(Diabetes. 2011 Nov;60(11):2883-91)。腎尿細管でのインスリンのNa再吸収に同経路の関与があるかどうかについて検討を行う。インスリン投与により腎皮質でのSREBP1蛋白、mRNAの発現がどのように変化するかを測定し、腎皮質でのこの経路の関与の有無を明らかにする。またインスリン抵抗性の有無によりこの経路の関与に変化が起きるのかについても検討を行う。
該当なし
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件)
J Am Soc Nephrol
巻: 未定 ページ: 未定
Kidney Int
Gastroenterology
10.1053/j.gastro.2013.03.047
Pflugers Arch.
10.1007/s00424-013-1277-1
Open Ophthalmol J
巻: 6 ページ: 36-41
10.2174/1874364101206010036
Lab Invest.
巻: 92 ページ: 1161-70
10.1038/labinvest.2012.71
Case Rep Neurol Med.
巻: 2012 ページ: 1-2
10.1155/2012/704639