研究課題
2型糖尿病による腎不全と高血圧発症機序として腎内選択的インスリン抵抗性、すなわち糸球体ではインスリンシグナルの障害および高血糖により血管内皮機能が低下するが、尿細管ではインスリンのNa再吸収亢進作用が保たれていることが注目されている。本研究の目的は腎内選択的インスリン抵抗性出現のメカニズムを明らかにし、これを標的とする新規治療法の開発を目指すことである。本年度は、インスリン抵抗性の有無によりインスリン/SREBP1c経路のシグナル伝達に相違があるかについて検討を行った。インスリン抵抗性を持つOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットとインスリン抵抗性のないLong-Evans Tokushima Otsuka (LETO)ラットのそれぞれについて肝臓、腎臓におけるSREBP1cのmRNA発現量を定量的PCRで比較した。肝臓でのSREBP1cのmRNAはLETOラットと比べOLETFラットで著名に増加していたが、腎臓においてはmRNA量に違いは見られなかった。さらにヒト腎皮質におけるmRNA量の比較を行ったが、インスリン抵抗性の有無で発現量に違いは見られなかった。これらの結果から、腎臓ではIRS2を介したシグナルはインスリン抵抗性の状態でもSREBP1cによる抑制を受けずに保たれており、この経路がインスリン抵抗性の状態での高血圧の発症に関連している可能性が示唆された。これらの結果と前年度までの結果をまとめてKidney International誌に発表した。
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Kidney Int.
巻: 87 ページ: 535-542
10.1038/ki.2014.351