研究課題/領域番号 |
24591227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水野 正司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20303638)
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研究分担者 |
鈴木 康弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20584676)
伊藤 恭彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60402632)
松尾 清一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190410)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工透析学 / 腹膜透析 / 補体活性化 / 補体制御 / 腹膜障害 |
研究概要 |
1.ラット中皮細胞の膜補体制御因子(CRegs)が、conventionalな4.25%酸性透析液(PDF)で、中皮細胞上の発現に影響を受けることを確認した。PDFの構成要素の内、pHと浸透圧を検討したところ、低pHでCRegsの減少はあるが、PDF範囲の浸透圧の影響は少ないことを確認した。 2.PDがもたらす影響について、ヒトPDF排液の補体活性化物質(sC5b-9)が腹膜機能を示すD/P Creと相関した。さらに、ヒトPDF排液から個々の患者の初代培養中皮細胞を得て、中皮細胞上のCRegsの発現を調べたところ、一部の患者でCRegsの発現低下を観察した。特にCD55の低下とD/P Creの上昇に相関を認めた。ヒト中皮細胞上CRegsの発現の低下とPD排液中sC5b-9の上昇が相関する傾向を認めた。さらに確かなものとするため、現在n数を増やして、臨床的要素との関係も含めてCRegs発現の変化と臨床的意義を検討中である。 3.先に作成して論文報告したCRegsの機能抑制より誘導される急性腹膜炎モデル(Nephrol Dial Transplant. 2010)で、急性腹膜障害におけるC5aの役割の検討とC5a inhibitorの治療応用の可能性についての検討を継続しており、現在、投稿中である。 4. 今後の研究の進展により、PDが腹膜に与える補体関連の機序と、抗補体療法の可能性と臨床的位置づけを明らかにできるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ラットおよびヒト中皮細胞の初代培養を用いた補体制御蛋白発現についての研究については、ほぼ計画通り進んでおり、本年度に結果の一部を国際学会(14th European meeting on complement in human disease)で報告予定である。 2. ヒト排液中の補体活性化物質の検討については、ELISAを用いて、上記1.の結果と合わせて基礎データの多くの測定を終えており、こちらの基礎データは上記1,の結果と合わせて上記国際学会で発表予定である。 3. 腹膜炎について、ヒト排液中の補体活性化物質の検討については、ELISAを用いて現在進行中である。今後も測定を継続して、n数を増やし、特に腹膜炎について、より精度の良い解析を行っていく予定である。 4. 上記1.より3.についての研究状況から、昨年度のin vivoの実験については、補体活性化物質のひとつであるC5a抑制による腹膜傷害保護効果について検討を行い、現在投稿中である。上記結果を踏まえ、今年度以降、in vivo実験も合わせて、腹膜における補体活性系の役割についての検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. ラットおよびヒト中皮細胞の初代培養を用いた中皮細胞上の補体制御蛋白発現についての研究については、ELISAで得られたデータとともに追加実験を行い、論文化を目指す。また、時間経過による影響を検討するため、本年度も継続して検討を行って行く予定である。 2. 腹膜炎についてのヒト排液中の補体活性化物質の検討については、ELISAを用いて検討を進めている。現在までに集まったデータに加えて、今後も測定を継続して、n数を増やしての解析を行っていく。このために臨床検体の収集も行っていく。 3. これまでの研究成果から、腹膜変化に関わる補体活性系の関与がわかってきたが、動物実験を用いて、腹膜炎と腹膜傷害について、in vivoの環境での補体活性化の詳細な検討を行っていき、補体制御による腹膜傷害改善や保護の可能性について探求していく。動物モデルについては、複数のpathogenによる腹膜炎について比較検討も行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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