研究課題
平成24年度に引き続き、ほぼ初期の計画に従って進行している。平成25年度の研究実績は、下記のとおりである。1. ラット中皮細胞の膜補体制御因子(CRegs)が、腹膜透析(PD)で用いられたconventionalな4.25%酸性透析液(PDF)で、中皮細胞上の発現に影響を受けることを確認した。2. 腹膜障害に関わるC5aの重要性とその治療的アプローチを動物モデルでアプローチした。これには、先に論文報告した巻く補体制御因子(CRegs)の機能抑制により誘導される急性腹膜炎モデル(Nephrol Dial Transplant. 2010)を用いて、急性腹膜障害におけるC5aの役割の検討とC5a inhibitorの障害腹膜への治療応用の可能性について検討をこれまで行い、その成果をAm J Physiol-Renal Physiol (2013)論文発表した。3. これまでの動物実験の結果を元に、PD患者に移行しての検討を開始したところ、PD治療が補体活性・制御系に影響を与えている可能性が強く示唆された。このため、動物実験とともに、PD患者の腹膜において補体制御系に与えている因子についての解析を進め、正体的には腹膜障害の予防的・治療的介入を目指して研究を進める。今後、PDが与える補体活性・制御系に関わる関連因子の解析を含めた研究を進め、新たな治療戦略としての抗補体治療の可能性と臨床的位置づけを明らかにできるものと考える。
2: おおむね順調に進展している
1. 先に論文報告した巻く補体制御因子(CRegs)の機能抑制により誘導される急性腹膜炎モデル(Nephrol Dial Transplant. 2010)を用いて、急性腹膜障害におけるC5aの役割の検討とC5a inhibitorの障害腹膜への治療応用の可能性について検討をこれまで行ってきたが、その成果を今年度Am J Physiol-Renal Physiol に論文発表した。2. H24年度に引き続き、腹膜透析(PD)患者の排液から得た初代培養ヒト中皮細胞を用いて、中皮細胞上の補体制御蛋白が、腹膜透析治療の影響を受けていることを2013年の国際学会(14th European meeting on complement human diseasees)で報告した。また、現在、ヒト腹膜透析排液中の補体活性化物質やIL6やCA125などの炎症性マーカー等をELISAで測定しつつ、現在、投稿に向けて追加実験を行っている。3. 上記の研究で、補体制御異常が起こる可能性と発生した場合の病態への影響について我々の行ってきた腹膜炎動物モデルの結果にとどまらず、PD患者の腹膜でも発生している可能性が示唆された。これに影響を与える因子について、TGFβ等関連物質や環境因子を複数チェックしたが、補体制御因子発現の変化に影響を与える因子を特定できなかった。4. ヒト腹膜透析患者の腹膜炎について、予後との関係をある程度示唆できた。ELISAによる補体活性化物質の測定と腹膜炎との関係を現在も引き続き検討中である。本研究については、腹膜炎の発生に伴って進む研究であり、今後もサンプルの収集・解析を継続する。
1. 腹膜透析(PD)患者の排液から得た初代培養ヒト中皮細胞を用いた、中皮細胞上の補体制御蛋白が腹膜透析治療の影響を受けていることについて、追加実験を含めて日本腎臓学会等に論文化して投稿する。2. 上記研究について、補体制御因子発現の変化を規定している因子は明らかになっていないため、引き続きこの影響する因子を探索していく予定である。これについて、PD患者の経時的変化が中皮細胞に与える影響を見る観察的研究が、現在、進行中であり、これに加えて、中皮細胞cell lineを用いた、in vitroでの刺激実験を計画している。3. 新たなサンプルの収集を継続して、ELISAによる補体活性化物質の測定と腹膜炎との関係を現在も引き続き検討中である。PD患者における解析については、時間経過を見ていく要素、腹膜炎など自然発生によりはじめて収集可能な検体もあるため、より長期にわたり研究期間を要する。平成26年度が最終年度となるため、上記の達成に努め、今回得られた結果をもとに、さらに発展させていく予定である。
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