研究課題/領域番号 |
24591230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
矢野 彰三 島根大学, 医学部, 准教授 (80403450)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 尿毒素 / 蛋白エネルギー消費 / インスリン抵抗性 / 腎不全 |
研究概要 |
本研究の目的は、既知の尿毒素物質が脂肪および骨格筋(前駆)細胞に及ぼす影響を、増殖、アポトーシス、分化・成熟、インスリン感受性について検討することであった。 まず、マウス脂肪前駆細胞3T3-L1を培養し、confluentになった時点で成長因子を含まないtest mediumに交換する。尿毒素としてフェニル酢酸(PAA)・インドキシル硫酸(IS)・pクレゾール(PC)・pクレゾール硫酸(PCS)などを添加し、細胞のviabilityを確認した。 次に、細胞増殖能を細胞数・Brd-U incorporationで、アポトーシスをトリパンブルー染色・Hoechst染色・Caspase3発現によって評価した。細胞の分化・成熟については、Oil Red染色による脂肪蓄積を評価し、分化や細胞形質を示す遺伝子について定量的real time RT-PCR法、で、PPARγなどのmRNAレベルの発現を検討した。また、インスリン感受性に対する各尿毒素物質の影響を検討するため、glucoseの取り込みについてRI(3H-Labeled 2-DOG)を用いたトレーサー実験を行った。 われわれは、PCが100μM以上の濃度で3T3-L1細胞の増殖、分化を抑制し、成熟脂肪細胞数が減少すること、一方でアポトーシスが増加すること、その結果、インスリン存在下、非存在下において細胞内へのグルコース取り込みが低下することを見出した。一方で、PCSやPAAではこのような著明な反応は認められなかった。このことは、すなわち、進行したCKDにおけるインスリン抵抗性には少なくとも一部尿毒素のPCが関与していること、そしてこの作用はPCに特異的である可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的であった脂肪および骨格筋に対する尿毒素の効果について、脂肪前駆細胞を用いた検討では一定レベルの結果が得られており、ほぼ順調に進んでいると考えている。しかしながら、骨格筋細胞については、未だ十分な結果が得られていないため、解析を速めてゆきたい。また、終末糖化産物(AGEs)についても検討する予定であったが、今までのところ、有意な結果を得るには至っていない。現在のところ、脂肪前駆細胞に対するPCの影響について、検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
培養マウス脂肪前駆細胞および骨格筋前駆細胞において、各尿毒素物質が細胞にどのように取り込まれるのか、その機序として関与する分子、シグナル経路、転写因子を定量的real time RT-PCR法、Western blot法などを用いて解明する。尿毒素による細胞障害性を回復する候補分子あるいは候補薬剤を同定するため、各尿毒素物質の細胞内への取り込みや動態について、選択的阻害薬やsiRNAなどの分子手法を用いて明らかにする。また、尿毒素物質によりインスリン感受性の低下が認められた場合は、その障害機序についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越研究費が生じてはいるが、その額は200千円弱で全体の4%弱であり、重大な状況が生じているのではない。繰越した研究費については、前年度購入する予定であった試薬など消耗品の購入に充てる予定である。したがって、平成25年度の使用計画としては、物品費として繰越をあわせた約1,000千円、旅費として350千円、その他50千円で、間接経費が360千円となる。
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