研究概要 |
「脳への骨髄由来細胞の分布不全が脳内RASおよび酸化ストレスの抑制不全を引き起こし中枢性機序として高血圧の病態に関連している」という仮説のもと、次の実験を行った。中枢性機序による高血圧モデルとしてAng II持続投与高血圧ラットを用いた。対照液(生理食塩水)の持続皮下投与と培養液の脳室内投与(icv)を受けた群(V/M群, n=5)、対照液の持続投与と骨髄由来細胞のicvを受けた群(V/B群, n=3)、Ang II持続投与と培養液のicvを受けた群(A/M群, n=4)、Ang II持続投与と骨髄由来細胞のicvを受けた群(A/B群, n=5)の4群を作成した。Ang IIは浸透圧ミニポンプを皮下へ埋込み150 ng/kg/minで持続投与した。ミニポンプ埋込み1週間後に自家骨髄由来細胞(1×106個)または培養液のicvを行った。ミニポンプ埋込み3週後に大腿動脈にカテーテルを留置する手術を行い、無麻酔無拘束下に安静時血圧を測定した。また、ヘキサメソニウム(C6)を静注した際の血圧降下度より安静時交感神経活動を評価した。V/M, V/B, A/M, A/B群の平均血圧(MAP)はそれぞれ125±2, 116±2, 174±7, 134±8 mmHgでAng II投与でMAPは上昇し、骨髄由来細胞の脳室内投与でその上昇は抑制されていた。C6投与後の血圧降下度はV/M, V/B, A/M, A/B群でそれぞれ38±3, 46±6, 77±5, 48±1 mmHgでAng II投与で降下度は大きくなったが、骨髄由来細胞の脳室内投与でその降下度は縮小した。骨髄由来細胞の脳室内自家移植はAng II持続投与による交感神経活動の亢進をおさえ血圧上昇を抑制した。骨髄由来細胞から分泌された液性因子がAng IIの交感神経活動亢進作用に拮抗した可能性が考えられた。
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