研究課題/領域番号 |
24591233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田村 功一 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40285143)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 生理活性 / 循環器・高血圧 / 生体分子 / トランスレーショナルリサーチ |
研究概要 |
研究代表者らは情報伝達系活性化や受容体internalizationに重要なAT1受容体C末端への新規直接結合因子としてATRAP (Angiotensin II Type 1 Receptor-Associated Protein)の単離同定に世界で初めて成功し,ATRAP が培養細胞ではAT1受容体を細胞内で捕捉して細胞表面のAT1受容体を減少させることによりAT1受容体情報伝達系に抑制的に作用することなどを報告してきた(Tsurumi Y, Tamura K, et al. Kidney Int 69:488-494, 2006). 今年度は,(1) ATRAPの発現・活性制御機構の検討.培養細胞系での検討によりATRAP遺伝子発現調節における基本転写制御機構の意義について明らかにした.また,small interfering RNA (siRNA)ライブラリを用いてATRAP遺伝子発現に影響を与える因子の探索をゲノムワイドに解析した.さらに検討ではATRAP遺伝子が内在性に高発現している腎尿細管細胞の系において,ATRAP遺伝子の発現調節に重要な複数のプロモーター領域を同定し,細胞・組織の分化に関連するRunx-3などの転写調節因子に加えてUSF1, USF2の関与を明らかにした. (2) 発生工学的手法を用いた臓器特異的ATRAP過剰発現モデルおよびATRAP欠損モデルでの高血圧関連生活習慣病の病態の検討.発生工学的ATRAP発現制御マウスを用いて,圧負荷,Ang II負荷,高食塩食負荷,高脂肪食負荷,カフによる血管障害負荷,尿管結紮負荷などの病的刺激を加え,高血圧関連生活習慣病の発症・進展に与える影響について明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究成果として全身性ATRAP高発現マウス,心臓特異的ATRAP高発現マウス,腎遠位尿細管特異的ATRAP高発現マウス,血管平滑筋特異的ATRAP高発現マウス,および脂肪組織特異的ATRAP高発現マウスの作製に成功するなど,おおむね順調に研究が進展しており,その結果として,国内外の学術学会,および国内外の学術雑誌に研究成果を発表している.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者らが単離・同定に成功した1型アンジオテンシンII(Ang II)受容体(AT1受容体)結合性低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)は,『AT1受容体情報伝達系の病的刺激による過剰活性化に対する内在性抑制機序を担う受容体結合分子』である可能性がある.本研究では,この受容体結合分子ATRAPに焦点を当てて,高血圧関連生活習慣病における病態生理学的意義について検討し,また,組織局所においてATRAPを制御することによる,高血圧関連生活習慣病に対する新規分子標的治療法開発の可能性について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該助成金が生じた状況は,予定していATRAP遺伝子発現解析が実験機器の不調により1回分施行できなかったことに’由来する.よって次年度使用額4,794円はその予定していたATRAP遺伝子発現解析実験で行う試薬の購入費用とする予定である.本研究では,『AT1受容体情報伝達系の病的刺激による過剰活性化に対する内在性抑制機序を担う受容体結合分子』として機能している可能性があるATRAPに着目して,以下の多面的な検討を行う計画である.それらは,(1) ATRAPの発現・活性制御機構の検討,(2) 発生工学的手法を用いた臓器特異的ATRAP過剰発現モデルおよびATRAP欠損モデルでの高血圧関連生活習慣病の病態の検討,(3) 高血圧関連生活習慣病の病態モデルにおけるATRAP調節機序の検討,(4) ヒト高血圧関連生活習慣病の病態における組織局所でのATRAP発現の検討,である.
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