今後の研究の推進方策 |
本研究は,高血圧関連生活習慣病に対する,生活習慣病増悪因子受容体への直接結合性機能制御因子(ATRAP)を足がかりとした病態解明および新規治療開発を目指した研究である.これまでの予備的研究結果においては,ATRAPにはAT1受容体 internalization を促進することにより,定常的状態の同受容体情報伝達系活性には影響を与えずに病的刺激によるAT1受容体系情報伝達系の過剰活性化を抑制する作用が認められている.したがって,ATRAPは『AT1受容体情報伝達系の病的刺激による過剰活性化に対する内在性抑制機序を担う受容体結合分子』である可能性がある(Tamura K, et al. Curr Hypertens Rep 9: 121-127, 2007; Mogi M, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol 27: 2532-2539, 2007; Aplin M, et al. Trends Cardiovasc Med 18: 305-312, 2008; Aplin M, et al. J Mol Cell Cardiol 46: 15-24, 2009; Zhang Z, Dzau VJ. Hypertension 55: 1086-1087, 2010). 本研究は高血圧関連生活習慣病増悪因子受容体への直接結合分子による受容体活性制御機能に着目した独創性の高い研究であり,本研究の研究成果により,高血圧関連生活習慣病におけるATRAPの発現・活性制御機構と病態生理学的意義が詳細に明らかになると考えられる.また,全身性ATRAP欠損マウスは,新たな高血圧関連生活習慣病の病態モデル動物として今後の高血圧関連生活習慣病の病態生理の解析や新薬開発の研究に有用であると期待される.さらに,本研究成果が,受容体直接結合性機能制御因子ATRAPを創薬標的とした,高血圧関連生活習慣病に対する新規分子治療薬開発に結びつく可能性がある.
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