研究課題/領域番号 |
24591236
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
美馬 亨 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (30373517)
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研究分担者 |
重松 隆 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (30187348)
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キーワード | FGF23 / Klotho / 脾臓 / B細胞 / 樹状細胞 |
研究概要 |
これまで、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor, FGF)23は骨組織の骨細胞で産生され、そのリガンドであるKlothoは腎臓の尿細管細胞に発現し、その生体内の役割は、リン代謝以外には知られていない。一方、我々は脾臓でFGF23とそのリガンドであるKlothoの発現を確認し、FGF23-Klothoシグナルが免疫系に関与する可能性を見出してきた。そこで、本研究ではFGF23とKlothoを脾臓で発現する細胞を特定することをとおして、その免疫系における役割を明らかにすることを試みた。その結果、脾臓の辺縁帯にある樹状細胞でFGF23が、そのリガンドであるKlotho分子は同じく辺縁帯に存在するB細胞に発現していることを本研究で明らかにしてきた。さらに、抗FGF23抗体と樹状細胞の表面マーカーに対する抗体を用いた免疫2重蛍光抗体組織染色の検討からFGF23を産生する樹状細胞はCD11c陽性CD11b陰性の形質細胞様樹状細胞であること、抗Klotho抗体と免疫担当細胞の表面マーカーに対する抗体を用いたフローサイトメトリー解析よりKlotho分子を発現している細胞はB220陽性のB細胞であることを平成25年度の研究で明らかにしてきた。さらに、このKlothoを発現しているB細胞はFGF受容体も発現していることを免疫組織染色で確認し、FGF23がKlotho陽性B220陽性B細胞を刺激できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、1.Klotho陽性B細胞の分化段階の特定、2.Klotho陽性と陰性B細胞をフロサイトメトリーで分離すること、3.分離した細胞それぞれをFGF23で刺激しKlotho陽性B細胞のみ刺激できることを確認することをとおしてリン代謝以外の生物学的役割の可能性を検討すること、4.Klotho陽性B細胞をFGF23で刺激し細胞内シグナル伝達分子のリン酸化を検討することを予定していた。 そのうち、1についてはKlothoを発現している細胞はフロサイトメトリー解析よりB220陽性の成熟したB細胞であることを特定した。2についてはフロサイトメトリーでKlotho陽性と陰性B220陽性B細胞をそれぞれ安定して分離することに成功している。3についてはKlotho陽性B細胞にFGF受容体の発現を確認しており、FGF23で刺激されることが示唆された。4については、現在、FGF23で刺激しFGF受容体の下流にあるERKのリン酸化を検討しており、研究成果をまとめる段階となっているので本研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
B細胞におけるFGF23-Klothoシグナルの生物学的役割を以下の方法で明らかにする。 1.Klotho陽性と陰性B220陽性B細胞を、それぞれフロサイトメトリーで分離する。分離したそれぞれをFGF23で刺激し、FGF23受容体の下流にあるERKなどのタンパク質のリン酸化を比較することにより、Klotho陽性B220陽性B細胞にのみFGF23刺激が伝わることを証明する。このことにより、FGF23-Klothoシグナルがリン代謝以外の生物学的役割をもつことを明らかにする。 2.Klotho陰性B220陽性B細胞を抗原受容体であるIgMもしくはIgDに対する抗体や抗CD40抗体などを用いてB細胞の細胞表面にあるシグナル分子を刺激したり、IL-4やIL-6などのB細胞を刺激するサイトカインで刺激し、定量的PCR法や抗Klotho抗体を用いたフロサイトメトリー解析によりKlothoが発現誘導されるか検討し、B細胞におけるKlotho発現メカニズムを明らかにする。 3.Klotho陽性B細胞をFGF23で刺激した細胞からタンパク質を抽出し、抗リン酸化抗体でウェスタンブロットを行い、ERK以外のリン酸化を受けるタンパク質を同定する。これにより、FGF23刺激によるB細胞内シグナル伝達系を明らかにする。 4.3で同定したシグナル伝達分子により誘導されると想定される分子について、FGF23で刺激したKlotho陽性B細胞の遺伝子発現と刺激しないそれを比較検討する。これにより、B細胞におけるFGF23の生物学的役割を明らかにする。
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