平成25年度までに、脾臓おけるFGF23を発現している細胞は形質細胞様樹状細胞であり、そのリガンドであるKlothoはB細胞に発現していることを明らかにしてきた。さらに、Klotho発現B細胞はFGF受容体1(FGFR1)も発現していることを確認し、FGF23刺激を受け取ることができる可能性も示唆してきた。そこで、平成26年度は、KlothoとFGFR1を共に発現しているB細胞がFGF23刺激を受け取ることが可能か、さらに、FGF23のこのB細胞における生物学的役割を明らかにすることを試みた。 最初に、KlothoとFGFR1を共に発現していることを確認したマウスB細胞株A20を用いて、FGF23刺激が細胞内に伝達されるか確認した。A20細胞株をFGF23で刺激したのち細胞からタンパク質を抽出し、FGFR1の下流にある刺激伝達物質であるERKのリン酸化についてウェスタンブロットを行った。その結果、FGF23刺激でERKのリン酸化を確認することができ、KlothoとFGFR1を共に発現しているB細胞はFGF23刺激を受け取ることができることが示唆された。 次に、FGF23刺激のKlotho陽性B細胞における生物学的役割を解析するために、A20細胞をFGF23刺激後、RNAを抽出し、増殖系遺伝子としてBcl-2とBcl-XL、分化系遺伝子としてIgG1について定量的PCR法を用いて発現誘導が起こるか解析した。Bcl-2とBcl-XLについてはFGF23刺激でその発現は増加しなかった。一方、IgG1はFGF23刺激後、有意に発現が増加(1.5倍)し、FGF23刺激は増殖ではなく分化誘導に働くことが示唆された。 以上のことから、脾臓の形質細胞様樹状細胞はFGF23刺激を介してKlotho陽性B細胞の分化誘導に関与していることが示唆された。このことから、形質様樹状細胞のFGF23発現を調節することにより、免疫抑制もしくは免疫賦活ができる可能性を示唆し、新たな創薬のシーズとなると考えられる。
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