研究課題/領域番号 |
24591237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
須田 廣美(木村―須田) 千歳科学技術大学, 総合光科学部, 教授 (00574857)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / カルシウム代謝 / 赤外イメージング / ラマンイメージング / 安定同位体 / 同位体顕微鏡 / 繊維化 / 異所性石灰化 |
研究概要 |
慢性腎臓病では骨ミネラル代謝異常のみならず、軟部組織の石灰化(異所性石灰化)を発症する場合がある。心筋の石灰化は線維化が原因と考えられているが、異所性石灰化のプロセスや線維化との関連は解明されていない。本研究では、慢性腎臓病モデルを作製し、カルシウム(Ca)安定同位体を一定期間食餌性に摂取させた後、腎臓、骨、心臓、肺、脳、肝臓、血管、腸管を摘出し、同位体顕微鏡、顕微ラマンイメージング、赤外イメージングを用いて各組織の構造や病態を可視化、解析する新規可視化手法を確立し、Ca代謝異常で発症する異所性石灰化と組織の線維化の関連について検討することを目的としている。平成24年度は、慢性腎臓病モデルラットの作製と各組織の摘出、骨、腎臓、心臓の赤外イメージング測定と顕微ラマン測定、骨、腎臓の同位体顕微鏡観察を行った。モデル動物の作製において、5/6腎摘出ラット慢性腎臓病(ESKD)モデルは腎機能モニタ途中で死に至る可能性が高いことが明らかになったため、Ca安定同位体は、4/5腎摘出ラット慢性腎臓病(CKD)モデルに投与して腎機能モニタを行った。赤外イメージング測定と顕微ラマン測定は、ESKDとCKDモデルの両方で行った。その結果、ESKDとCKDの腎臓において、リン酸が腎髄質に蓄積することが認められ、特にESKDでは著しいことが明らかとなった。また、ESKDの心臓では、変色部位(石灰化部位)やリン酸の増加を確認したが、CKDの心臓では、わずかな変色部位のみ認められた。一方、大腿骨では、共に海綿骨が減少し、高代謝回転骨となっていた。これらの結果から、CKDが原因で組織にリンが蓄積する二次性副甲状腺機能亢進症を発症した場合においても、初期段階では必ずしも心臓などに異所性石灰化を発症しないことが示された。また、骨から溶出したカルシウムが直ぐに異所性石灰化に結び付かないことも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度計の計画では、1.慢性腎臓病動物モデルの作製、2.Ca安定同位体の投与、3.組織の摘出、4.組織の包埋と薄切片の作製、5.赤外イメージ測定の開始、6.ラマンイメージ測定の条件検討、7.同位体顕微鏡観察の条件検討であった。1.慢性腎臓病動物モデルの作製と2.Ca安定同位体の投与に関しては、当初計画していた5/6腎摘出ラット慢性腎臓病モデルに加え、4/5腎摘出ラット慢性腎臓病モデルを作製したために時間を要した。また、4.組織の包埋と薄切片の作製では、組織によっては薄切片を作製するのが難しく、腎臓、心臓、肝臓、骨の薄切作製のみ成功している。さらに、同位体顕微鏡のマシンタイムが詰まっているため、測定時間を見つけるのが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が抱えている問題、1.薄切が困難な組織の試料調整、2.同位体顕微鏡観察のマシンタイム確保を解決するために、平成25年度は少し計画を変更し、下記の通り研究を推進する。尚、平成26年度は予定通り、データ解析、学会発表、論文作成等を中心に行う。 1.新規包埋・薄切法の開発:心臓片、腎臓片は、薄切後に行う脱パラが成功し、赤外イメージング測定、顕微ラマン測定に適した試料を作製することができた。一方、他の軟組織は、パラフィンが残るため測定に問題が生じた。本年度は、心臓、腎臓、骨以外の組織の薄切標本を作製するための新規包埋・薄切法の開発を行う。 2.ラマンイメージング測定と解析:昨年度は、785nmのラマンイメージング装置を使用することができなかったため、1064nmの顕微ラマン分光を改良し、新規顕微ラマンイメージングの構築を行い、試料を測定した。本年度は、年度の後半から785nmの顕微ラマンイメージングを使用することができるため、勢力的にラマンイメージング測定を行う。 3. 同位体顕微鏡観察と解析:マシンタイムを確保することが難しいため、既に薄切された試料に関しては、赤外イメージングのデータと照らし合わせながら、効果的に観察を行う。また、測定にはEPMAも併用する。 4. 赤外イメージング測定:新たに薄切標本を作製することができた試料については、精力的に測定と解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度からの繰越金は、同位体顕微鏡借用料、試料調整のための治具、試薬類の購入などに当てる。25年度請求金額は、予定していた試薬類、試料台のほか、試料調整の委託費に使用する予定である。
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