研究課題/領域番号 |
24591238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小久保 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20287965)
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研究分担者 |
小林 弘祐 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70153632)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気透析 / 人工シャペロン / アルブミン結合毒素 |
研究概要 |
本研究では、「タンパク質をきれいにする」という新しい概念の血液浄化法を確立することを目的としている。すなわち、タンパク結合毒素のタンパク質と毒素の結合を外し、毒素を除去してタンパク質を再生する。これにより、血液透析患者、保存期腎不全患者、急性肝不全患者などに適用可能な新たな治療手段を提供することを最終目標としている。本研究の目的は、次の2つの技術を確立し、それを組み合わせたシステムを構築することである。 1)電気透析によるアルブミン結合毒素の効率的な除去 2)ナノゲル人工分子シャペロンによる三次構造の再構築によるアルブミンの再生 1)については、電気透析用電解セルのみでタンパク結合毒素の除去速度を測定し、毒素の除去に最適な装置の大きさ、操作条件を検討するために、アルブミンとインドキシル硫酸を用いて検討した。毒素は一定速度で除去することが可能であったが、除去効率を増加させるために電圧を増加させるとタンパク質の変性が起こってしまうため、除去速度はこのままではあまり大きくできないことが分かった。除去効率を向上させるためには、電気透析とタンパク質変性剤を併用するとよいと考えられた。 2)については、変性剤によって三次構造の崩れたアルブミンをリフォールディングするシャペロン機能を人工的に構築することを最終目的としている。当初はナノゲル人工分子シャペロンを応用する予定であったが、これでは大量処理が難しいため、親水性マイクロ微粒子を充填した充填カラムを用いて、その隙間をアルブミンをリフォールディングするための場として使用することとした。いくつかの予備検討から、リフォールディングのためには、カラム内で変性剤の濃度を徐々に低くすることが必要であると考えられたため、血液透析に用いられる中空糸形状の透析膜の中空部分に親水性マイクロ微粒子を充填する方法を用いる方法がよいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね順調に進行しているが、人工分子シャペロンの実験については、ナノゲル人工分子シャペロンを用いると十分な処理速度が確保できないこと、前処理・後処理に多くの工程が必要であることが分かったので、方向性を転換し、新たに充填カラム型の人工シャペロン装置を構築することとした。その分、当初予定より若干進行が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、下記の2点を達成できるよう研究を推進する。 1)電気透析によるアルブミン結合毒素の効率的な除去 2)ナノゲル人工分子シャペロンによる三次構造の再構築によるアルブミンの再生 1)については、電気透析とタンパク質変性剤を併用したときの効果を検証する実験を行う。これにより、特にアルブミン内部の結合サイトに結合しているアルブミン結合毒素の効率的な除去を可能にできると考えられる。変性剤としては、中性の尿素と塩基性の塩酸グアニジンを候補とする。それぞれの変性剤は、pHとイオン交換膜の透過性が異なっており、それぞれを用いたときの結合毒素の除去特性を調べることで、本装置に適した変性剤の性質も明らかにできると考えられる。さらに電圧をかけたときのタンパク結合毒素の除去速度を測定し、毒素の除去に最適な装置の大きさ、操作条件を明らかにする。 2)については、親水性マイクロ微粒子を充填した充填カラムを用いて、その隙間をアルブミンをリフォールディングするための場として使用する人工シャペロン装置を用いて、アルブミンのリフォールディングの効率を検討する。特に、アルブミン変性剤の除去速度とリフォールディング効率の関係に着目して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、当初予定通り、設備備品として小動物用人工呼吸器を購入する。マウスもしくはラットを麻酔し、人工呼吸管理下で実験する必要があるためである。 消耗品として、実験に必要な物品(材料費)、ポンプ、測定用キット、試薬を購入し使用する予定である。また成果発表および調査を目的とした学会参加を予定しており、そのための旅費を使用する予定である。
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