研究課題/領域番号 |
24591239
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉田 理 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00306713)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 慢性腎不全 / 動脈硬化症 / 血管石灰化 / リン |
研究概要 |
慢性腎臓病に伴う動脈硬化性病変では、中膜の石灰化が特徴的である。石灰化病変は心血管死と相関し、慢性腎臓病患者の予後を左右する最も重要な因子の一つであるため、そのメカニズムの解明は治療戦略をたてるうえでたいへん重要である。本研究では、培養細胞および動物モデルを用いて、動脈石灰化に関わる遺伝子調節の変化とそれに伴う、エピジェネティック変化を検討することを目的としている。 培養血管平滑筋細胞を用いた検討では、高リン負荷による血管平滑筋細胞の骨様細胞への形質変換のモデルを用いて、この変化に転写因子Klf4が関与することを同定し報告した(Yoshida et al., J Biol Chem, 2012)。つまり、平滑筋細胞を高リン状態においた場合、平滑筋分化マーカーであるSM a-actin、SM22aの発現が低下し、骨細胞の分化マーカーであるosteopontin、ALP、Runx2の発現が亢進するが、これらの変化にKlf4が関与することを発見した。とくに、Klf4によるosteopontin遺伝子の発現調節機構を遺伝子プロモータのレベルで解明した。また、Klf4は高リン血症をきたすアデニン負荷慢性腎不全動物においても動脈石灰化部位に発現が認められ、慢性腎不全に伴う高リン血症が石灰化病変を形成するにあたって、重要な役割を果たしている可能性が示唆された。現在、これらの遺伝子発現の変化に伴うヒストン修飾の変化を検討している。 一方、5/6腎摘を行ったマウスについて、血管石灰化の形成の様子も検討している。C57/BL6系マウスは血管石灰化に比較的抵抗性であることから、CBA/2系マウスに5/6腎摘を施し、12週間後の血管の石灰化を検討している。予備実験の段階では、腎摘後12週での血管においてカルシウム沈着量の増加が認められ、現在それに伴う遺伝子変化、ヒストン修飾変化を詳細に検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高リン負荷による血管平滑筋細胞の骨様細胞への形質変換に関与する転写因子を同定し、また、CBA/2系マウス用いた血管石灰化モデルマウスを樹立できたという点で、平成24年度の計画は順調に進行したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
培養血管平滑筋細胞における高リン負荷モデル、および血管石灰化モデル動物が樹立したことから、これらの石灰化過程で変化する遺伝子のプロモーター領域につき、ヒストン修飾の変化を調べる。同時にその領域に親和性のあるヒストン修飾酵素の同定を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費の多くは、細胞培養実験試薬代、分子生物学実験試薬代、免疫組織化学実験試薬代、動物飼育代に使われる。また、研究補助者への謝金にも使用する予定である。
|