研究課題/領域番号 |
24591243
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
石橋 賢一 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80223022)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水チャネル / アクアポリン / 嚢胞腎 / オートファジー / 小胞体 / 脳浮腫 / 血管内皮 / 脳梗塞 |
研究概要 |
1.全身のオートファゴゾームが蛍光標識されるGFP-LC3トランスジェニックマウスを東京医科歯科大学難治疾患研究所の水島教授から供与をうけて、繁殖させるとともに、すでにこちらにある水チャネルAQP11欠損マウスとかけあわせた。約半年後に使用可能となった。 絶食マウスの筋肉、肝臓、腎臓のオートファジーの発現をGFP蛍光で確認することができた。AQP11欠損マウスの腎臓においても、生後1週で近位尿細管細胞でのオートファゴゾームと思われる蛍光を観察できた。正常のマウスでは蛍光がみられなかったのでAQP11欠損によってオートファジーが誘導された可能性がある。また腹腔に大量アルブミンあるいは葉酸を投与した腎障害モデルでの腎臓でのオートファジーも確認した。 2.脳毛細血管内皮細胞にAQP11が発現しているので、野生型マウスおよびAQP11ノックアウトマウスの左総頸動脈を結紮し、脳梗塞モデルを作成した。結紮後12時間までの脳を摘出し、リアルタイムPCR法にてAQP11、その他AQPs、GFAP(アストログリア細胞マーカー)の発現量に対して比較検討した。結紮後2時間では、コントロールマウスの未結紮群と比較してAQP11の発現量は約1/2に減少した。それに対し、結紮後12時間では、AQP11の発現は未結紮群と同程度あるいは、わずかに増加した。その他AQP1、AQP4、GFAPの発現量はいずれの場合でも減少した。また、AQP11ノックアウトマウス(ヘテロタイプ)においては、結紮によりAQP1の発現量がわずかに増加することがわかった。東北大学大学院薬学研究科薬物送達学分野寺崎哲也先生より脳毛細血管内皮細胞の供与をうけてAQP11の発現の確認をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.全身のオートファゴゾームが蛍光標識されるGFP-LC3トランスジェニックマウスの繁殖とAQP11欠損マウスの掛け合わせで6ヶ月を要したが。その間に葉酸、大量アルブミン、ラパマイシン、バフロマイシン、トプシガージンなどによる腎障害の検討ができた。オートファジーマウスが使えるようになってから絶食などのポジティブコントロールの検討をおこなうことができた。 2.トランスジェニックマウスはホモの状態では継代が難しく(GFPの負荷のためか)、ヘテロマウスを掛け合わす必要があり、実験に十分なマウスを得るのに予想以上に時間がかかることが明らかになった。そのため掛け合わすマウスをスケールアップして対応している。 3.腎障害のモデルによるオートファジーの関与に差があるので、モデルごとにAQP11と有無とのかかわりをみていく必要があるので、実験系が多くなって、取捨選択をしている。 4.腎臓以外の組織の検討は脳を中心におこなっているが、他の臓器の検討が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
1.腎臓のオートファジーについてはウゥスタンブロット法などを用いた定量的検討をおこなう予定 2.脳の毛細血管の脳浮腫への関与を細胞培養のレベルで検討するとともに、低酸素における脳梗塞モデルで急激な浮腫をマウスに作成して、AQP11の有無による脳浮腫の病変をあきらかにする。 3.急性腎障害モデルマウスにおいてオートファジーの関与をあきらかにするとともに、AQP11が半分のマウスにおける腎障害の重症化について検討し、それを軽減させるためにAQP11の発現を増加させるシスティンの投与による影響をみることで、あらたな治療法の開発につなげる。 4.腎以外の臓器として、脳以外に肝臓と胸腺に注目して、AQP11の発現細胞をあきらかにするとともに、障害モデルでのAQP11の関与について検討する。またマイクロアレイをもちいてAQP11欠損マウスでの発現の違う遺伝子を網羅的に検討する。 5.AQP11欠損マウスののう胞腎に多様性があることから(数ヶ月生存するのもみられる)、ヒトにおいても新生児期に腎不全で死ぬとは限らず、成人にまで達しているのう胞腎もある可能性があるので、AQP11欠損マウスののう胞腎以外の異常(難聴、視力異常、嗅覚異常、行動異常、免疫異常、ホルモン異常、骨異常、心筋異常、精巣異常、胸腺異常、腸異常、肝異常など)を明らかにしてヒトににおいてもAQP11欠損症例を見つけれるようにする。さらに、それをたよりに疑わしい症例の家族内AQP11遺伝子解析をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬、マイクロアレイ解析、マウス維持費などの消耗品にほぼ全額使用する。一部アメリカや日本の腎臓学会に発表参加費にあてる。
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