研究課題/領域番号 |
24591245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
田村 雅仁 産業医科大学, 大学病院, 准教授 (40330980)
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研究分担者 |
芹野 良太 産業医科大学, 医学部, 講師 (00309957)
宮本 哲 産業医科大学, 医学部, 助教 (30611305)
椛島 成利 産業医科大学, 大学病院, 講師 (80279322)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換(米国) |
研究概要 |
腹膜透析患者における腹膜組織の劣化の原因として、腹膜炎などの急性腹膜障害の既往や透析液に含まれる非生理的物質への慢性暴露などが挙げられる。我々は腹膜中皮細胞を用いて透析液に含まれる高濃度のブドウ糖がインテグリンを介した創傷治癒過程を阻害することを報告した(Tamura M. Kidney Int. 63: 722, 2003)。最近、インテグリン活性化ペプチドであるPHSRNは糖尿病モデルラットにおいて皮膚の創傷治癒を促進することや、ラット角膜上皮細胞の遊走を促進し角膜潰瘍の治癒過程を促進することが報告されており、我々もインテグリン活性化ペプチドPHSRNにより腹膜中皮細胞の再生を促進することにより腹膜障害を抑制することを報告した(Miyamoto T, Tamura M. Nephrol Dial Transplant, 25:1109-1119, 2010)。さらに腹膜透析液の主成分であるブドウ糖やイコデキストリンによる腹膜中皮細胞の再生障害についても検討を行い、透析液に含まれる高濃度のブドウ糖はインテグリンを介した創傷治癒過程を阻害するが、一方で新しい透析液に含まれる浸透圧物質のイコデキストリンではこのような阻害作用がなく、腹膜障害性が少ない可能性があることを報告した(Matsumoto M, Tamura M. Life Sci, 90: 917-923, 2012)。本研究は腹膜透析における腹膜障害発症や進展の抑制について、インテグリンシグナルを介した創傷治癒という観点からの検討を行うことで、腹膜透析療法の長期間にわたる安全な実施を期待できるようになる可能性があり意義が高いものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PHSRNのインテグリンによる細胞内シグナル伝達に与える影響に関しては計画通り順調に進捗しているが、一方で今回の研究で腹膜創傷治癒促進による腹膜障害治療の臨床応用に向けて、PHSRNペプチドによる腹膜創傷治癒促進作用の機序解明やペプチドの最適な投与方法の検討などを行うことに関しては、腹膜透析ラットモデルにおいてPHSRNペプチドの投与法と、各種サイトカン・成長因子の関与の検討を行っているが、未だ十分な成果を挙げることが出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
ラット腹膜透析モデルにおいて中皮細胞の単層剥離による急性腹膜障害を惹起し、腹膜創傷治癒の過程において腹膜透析とPHSRNが与える影響を検討する。また、腹膜創傷治癒促進による腹膜障害治療の臨床応用に向けて、PHSRNペプチドによる腹膜創傷治癒促進作用の機序解明や、ペプチドの最適な投与方法の検討などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
腹膜透析ラットモデルにおいてPHSRNペプチドの投与法と、各種サイトカン・成長因子の関与の検討を行っているが、一部予定通り研究が進捗しておらず実験が遅延しているところがあり繰越額が生じている。次年度は動物腎疾患モデルの作成のため、ラット購入、手術関連費用(麻酔薬、消毒薬、手術器具など)が必要である。インテグリンシグナルについて研究を行う際に必要な、FAK(wild-type FAK、dominant-negative FAK)、PTENなどのプラスミドやアデノウイルスの培養、精製などを行う必要がある。培養細胞についてはラット腹膜中皮細胞、線維芽細胞などの購入や継代培養のための維持費用が必要である。Western blotting用や免疫染色用の試薬は頻繁にかつ多量に使用するため購入する必要がある。その他、抗体や試薬を多数かつ多量に使用する必要がある。 研究成果を日本腎臓学会総会、日本透析医学会総会などで発表するための旅費が必要である。成果発表は米国腎臓学会あるいは国際腎臓学会においても行う予定であり、旅費を要する。また英語原著論文作成に当たり、英文校正のための謝金が必要である。投稿費、掲載料としての費用も要する。
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