研究実績の概要 |
【目的】アルツハイマー病(AD)の病態において、アミロイドβ蛋白(Aβ)がミトコンドリア内に蓄積し、ミトコンドリアの機能不全を引き起こす可能性が示唆されている。今回我々は、アミロイド前駆体蛋白(APP)を過剰発現する細胞を用いて、ミトコンドリアおよびマイクロゾームにおけるAPP、BACE1、γ-secretase複合体の発現量を評価し、ミトコンドリア内におけるAPP代謝について検討した。 【方法】Swedish変異型のAPPを過剰発現するヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)細胞を材料として用いた。細胞を、遠心分離を用いた細胞下分画法によりCrude mitochondria(CM)画分・Microsome (MS)画分に分離した.CM画分内のライソソームをさらに分離するため,さらにIodixanol 密度勾配遠心分離を追加した。それぞれの細胞内小器官マーカーで分離を確認した後、BACE1、γ-secretase複合体因子、APPなどの発現をウェスタンブロッティングで解析し、比較した。 【結果】粗ミトコンドリア画分には、microsomeと同程度にγ-secretase複合体の構成蛋白であるPS1, NCT, Aph-1, Pen-2が含まれていた。BACE1はミトコンドリアよりもミクロソーム画分に優位であった。APP, ADAM10は両画分に同程度含まれていた。また、γ-secretase複合体構成蛋白は精製ミトコンドリアよりもライソソームを多く含む画分に多く回収された。精製ミトコンドリアにはADAM10と未熟型APPはあるが、BACE1およびγ-secretase複合体は少なかった。 【結論】精製ミトコンドリア画分内にはBACE1およびγ-secretase複合体は少ない。したがって、ミトコンドリア内でAPPからAβが産生されている可能性は低いと考えられた。
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