本研究は末梢神経障害にける神経軸索進展促進薬を用いて新規神経再生医療としての臨床応用を目指している。近年、様々な神経軸索進展促進薬の有効性が報告されていることから、抗体と他薬剤において最適な治療方法の確立も検討することとした。初年度は①ラット末梢神経障害モデルを作成し、既報告による神経挫滅時の脊髄組織内へのRGMa蛋白発現の再確認、②ビタミンB16及びビタミンA製剤の併用投与も行った。さらに各種ビタミン剤の神経軸索進展効果に対する至適濃度の検討を行い、特にビタミンA製剤において100pMの低濃度で神経軸索に対して著明な軸索伸長効果が見られた。この結果、中和抗体との併用もしくはビタミン製剤単独投与により、神経障害に対する有効な改善効果が得られるものと考えられた。次年度はビタミン製剤による神経軸索に対する改善効果に着眼した投与実験を中心に進め、神経軸索障害後のRGMa蛋白発現のピークは10日前後であることから、①神経挫滅直後②挫滅後1週間の投与群に分けて各種薬剤を投与し、電気生理学的評価(複合筋活動電気(CMPA)、運動神経伝導速度(MCV))を投与開始から1週間に1度の割合で測定を行い、神経回復治療効果の評価を行った。その結果、顕著な有意差は得られなかったが、ビタミン製剤投与群の測定値が無投与群を比較して若干正常値に近づく改善効果が得られた。また、RGMa関連遺伝子の調査及び遺伝子コンストラクト等の作成を行い、今後は神経軸索障害によるRGMa蛋白関連遺伝子とRGMa蛋白発現との関係を明らかにしていくことを考えている。さらに本研究では既報の新規トレーサーを使用し、各種動態解析を行ってその利用可能性の検討も行い、将来的にはRho-kinase活性化を可視化するための新規PETトレーサーを用いて病態メカニズムの解明に役立てることを今後の目標とした。
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