研究課題
基盤研究(C)
脊髄小脳失調症(SCA)は有効な治療法が無い重篤な常染色体優性遺伝性の難病である。近年ゲノム非翻訳領域からの転写産物、いわゆるnon-coding (nc)RNAが、遺伝子発現調節や染色体構造維持など多数の重要な機能を担うことが知られ、ncRNAの変異による神経疾患も多数発見されている。本研究では、本邦で頻度が高く、原因がncRNAであるSCA31について、患者脳、自作モデルマウスでRNA-seqを行い、患者でまず異常発現するncRNAを同定し、次に患者iPSやショウジョウバエモデル、マウス小脳初代培養組織を用いてその意義を究明し、最終的には重要な関与をするncRNAの発現制御による治療法開発へ挑戦する。初年度である平成24年度は、自作モデルマウスでのRNA発現異常の解析を進めた。これまでSCA31のモデルマウスとしては世界初の本マウスにおいて、患者脳と同様のRNA異常構造物を認めた。この時期の小脳における遺伝子発現解析を進め、ある分子の発現異常が認められた。本所見を患者脳でも検証し、同様に患者脳では対照脳よりも異常なレベルに発現していることが判った。2年度に向けてRNA seqの条件検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
我々が自作したモデルマウスでは、確かに患者脳と同様の変異遺伝子の発現が得られ、異常RNAの産物である異常構造物が認められることが本年度判った。このことが本研究を進めるうえで大きな前提で在ったため、この確認の意義は大きいと考えている。また、iPS細胞の樹立へ向けた倫理審査等の準備も進んでおり、ほぼ目標通りの達成度であると考えている。
今後は、まずモデルマウスでのRNA seqを対象脳組織と対象神経細胞に絞って検索する。このため、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、当該疾患によって最も変性しやすい細胞に焦点を当てた研究を進める。本年度後半でRNA-seqを完了させる見通しである。
本研究費でRNA-seqの費用や他の遺伝子発現解析・遺伝子シークエンス解析のための費用に補填する。
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