研究課題/領域番号 |
24591253
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉川 弘明 金沢大学, 保健管理センター, 教授 (10272981)
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研究分担者 |
横山 茂 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (00210633)
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キーワード | アセチルコリン受容体 / 神経型アセチルコリン受容体 / 重症筋無力症 / 自律神経機能障害 / 免疫性神経疾患 / 自己免疫 |
研究概要 |
ヒト胎児腎由来のHEK293細胞に神経型アセチルコリン受容体α3サブユニット、β4サブユニットを共発現させた細胞株を樹立した。一方、歩行障害と両下肢感覚障害を来たし、肺腺癌が見つかった患者が、傍腫瘍性末梢神経障害(感覚運動自律神経ニューロパチー)と診断された。この患者の血清には、アセチルコリン受容体α3サブユニットに対する抗体が存在することが確認されたため、この血清を希釈してHEK293細胞(neuronal AChR α3β4の共発現細胞)の培養上清に加えたところ、患者血清は市販の抗α3サブユニット抗体と細胞質内の同じ部位に結合することがわかった。さらにα3サブユニット抗体を使い、その作用を検討したところ、この抗体はニコチンにより誘発される細胞内カルシウム流入を阻害することがわかった。この作用は細胞培養環境の温度を下げることで、働かないことが示された。そのため、神経型アセチルコリン受容体α3サブユニットの抗体による減少現象はエンドサイトーシスを介しているものと推測された。 次に我々は、認知症の中で自律神経機能障害を伴うdementia with Lewy bodies (DLB) と伴わないAlzheimer病(AD)を自律神経機能評価により分離できないか検討した。その際、sympathetic skin response (SSR)とheart rate variability (HRV)の二つの方法を評価手段とした。その結果、SSRだけでなくHRVによっても、DLBとADを良好に分離できることを示すことが出来た。SSRの感度は85%、HRVの感度は90%と日常診療で応用が期待できるレベルであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経型アセチルコリン受容体α3サブユニットに対する細胞障害作用の証明に関する基礎的検証は行うことが出来た。また、自律神経機能評価検査としてHeart Rate Valiability (HRV)の有効性を示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
多くの患者の血清から、神経型アセチルコリン受容体α3サブユニットに対する自己抗体をスクリーニングするアッセイ方法を開発する。それを応用し、同時に複数の蛋白(中枢神経系ニューロンに発現する受容体蛋白)に対する自己抗体スクリーニング系を開発する。また、並行して多くの神経疾患における神経型アセチルコリン受容体α3サブユニット障害の結果としての自律神経機能異常をスクリーニングして、自己抗体発現との関連を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、自己抗体の細胞障害作用に関する研究に集中したため、抗体スクリーニング系の開発は次年度に行うこととした。そのために必要な消耗品などの経費は次年度使用分にまわすこととした。 次年度、抗体スクリーニング系の確立に必要な試薬類などの消耗品購入を早めに行って、当初の計画に沿って予算を使用する。
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