研究課題
脊髄小脳失調症31型(SCA31)2名の剖検脳の神経病理学的な検討を行った。SCA31小脳プルキンエ細胞では周囲に特徴的なhalo構造を有する変性過程とそれを有さない変性過程があることを指摘した(Yoshida K, et al. Neuropathology 2014)。両者の比率は患者によってまちまちであったが、特徴的なhalo構造を有する変性プルキンエ細胞ではそうでない細胞に比べてGolgi装置の断片化が高率に起きていた。このことは細胞周囲のhalo構造(主体はプルキンエ細胞体からの樹状突起の増生)の成因としてGolgi装置の機能障害による蛋白の仕分けの異常が関与している可能性が示唆された。一方、SCA31の遺伝子異常は双方向性に転写されるBEAN/TK2が共有するイントロン内への(TGGAA)nの挿入変異とされる。SCA31のRNA病因説とは、(UGGAA)nを有するpre-messenger RNAが核内で種々の蛋白との相互作用により細胞毒性を発揮するというものである。この仮説に基づき、ビオチンラベルした(UGGAA)8プローブを用いて、マウス脳ホモジネートを試料としてDynabeads M-280によるpull-down法→LC-MS/MS解析により(UGGAA)8に結合する蛋白の同定を試みた。この結果、1つの候補蛋白を同定したが、これはミトコンドリア内膜に局在する蛋白であった。本来なら異常pre-messenger RNAは核内蛋白との相互作用を介してプルキンエ細胞の変性を惹起すると想定される。候補蛋白がミトコンドリアに局在するという事実は今回の実験条件下では本来、目的とする(UGGAA)n結合蛋白が拾えておらず、false positiveであるという可能性はある。ただ、神経病理学的には本症の変性プルキンエ細胞では高度の核の変形が見られることから、RNA分解を免れた異常pre-messenger RNA断片が脆弱な核膜をすり抜けて細胞質内で毒性を発揮するという機序も推察された。
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