研究課題/領域番号 |
24591256
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
犬塚 貴 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184734)
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研究分担者 |
木村 暁夫 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00362161)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗神経抗体 / 抗血管内皮抗体 / アルツハイマー型認知症 / 抗Tom40抗体 |
研究概要 |
これまでに、ヒト大脳微小血管内皮細胞を抗原とした二次元免疫ブロット法と質量分析の手法を用いて60歳以上のアルツハイマー型認知症患者24例と対照者54例(60歳以上の神経疾患非合併患者19例、40歳未満の神経疾患非合併患者18例、多発性硬化症患者17例)の血清中に存在する抗血管内皮抗体の検索を行った。その結果、アルツハイマー型認知症患者に比較的多く存在する5つの自己抗体を同定した。これら自己抗体の認識抗原蛋白はVimentin, Protein disulfide-isomerase A3 (PDI A3), Alpha enolase, Mitochondrial import receptor subunit TOM40 homolog (Tom40), Annexin A2であった。5つの自己抗体の中、抗Tom40抗体のみがアルツハイマー型認知症患者において、対照者と比較し有意に抗体陽性率が高値であった。次に抗Tom40抗体陽性のアルツハイマー型認知症患者と抗体陰性のアルツハイマー型認知症患者の認知機能をMini-Mental Scale Examinationを用いて評価し、比較検討した結果、抗Tom40抗体陽性のアルツハイマー型認知症患者は抗体陰性のアルツハイマー型認知症患者と比較し有意にMMSEの点数が低い結果となった。Tom40はミトコンドリア外膜に存在し、ミトコンドリア内への蛋白の選択輸送に関与するチャンネルを形成していることが知られている。最近のゲノムワイド関連解析の結果、Tom40をコードする遺伝子TOMM40のリスクアリルはコントロールと比較し晩期発症型アルツハイマー型認知症の発症が2倍になるといった報告やTOMM40のイントロン変異を持つ患者は、発症が約7年早くなるといった報告もある。抗Tom40抗体の病的意義に関し今後の検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 (理由)これまでに、ヒト大脳微小血管内皮細胞を抗原とした二次元免疫ブロット法と質量分析の手法を用いて、アルツハイマー型認知症患者の血清中に存在する抗血管内皮抗体の認識抗原蛋白として上記複数の抗原蛋白を同定することができた。特に抗Tom40抗体は、アルツハイマー型認知症患者の認知機能障害と関連する可能性もあり、現在さらに多数例での検討と培養細胞を用いた抗Tom40抗体の機能解析を予定している。さらにアルツハイマー型認知症患者および対照者の血清および髄液中に存在する抗神経抗体の検出ならびに、その認識抗原蛋白の同定のためのシステム(ラット大脳およびヒト神経芽細胞腫由来細胞を抗原とした二次元免疫ブロット法とMALDI-TOF MSによる質量分析)の構築が終了し、現在解析を行っている。また、本研究に関連して、アルツハイマー型認知症に高率に合併することが知られている脳アミロイドアンギオパチー(CAA)患者の血清・髄液中の抗アミロイドβ(Aβ)抗体を測定した結果、病理学的に血管炎の存在が確認された症例(CAA関連炎症)で髄液中の抗Aβ42抗体が高値となり、抗免疫療法の治療メルクマールとなる可能性を見出し報告することができた。以上のことから、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、アルツハイマー型認知症患者の血清および髄液中に存在する抗神経抗体の検出とその認識抗原蛋白の同定を重点的に行う予定である。またあらたに、当科外来を受診した患者を対象とした抗血管内皮抗体の検出も継続して行う予定である。さらに本年度同定した抗Tom40抗体の特異性の検討を行う。具体的には多数例での検討を目的としたELISAシステムの構築や抗Tom40モノクローナル抗体がヒト大脳微小血管内皮細胞や神経芽細胞腫由来細胞に及ぼす影響につき生化学的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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