研究課題
本年度、神経芽細胞腫由来培養細胞を抗原とした二次元免疫ブロット法を用い、20例のアルツハイマー型認知症(AD)患者の髄液中に存在する抗神経抗体を検出した。二次元ブロット後のメンブレン上に合計135個の抗体反応スポットを確認した。このうちの5例(25%)以上のAD患者で陽性となった抗体反応スポットは合計13個あり、MALDI-TOF-MSによる質量分析の結果、13個の内の10個のスポットから8種類の認識抗原蛋白を同定した。抗原蛋白名は、Heat shock 105kDa/110kDa protein 1, isoform CRA_B; 78 kDa glucose-regulated protein; Heat shock cognate 71 kDa protein; Tubulin beta chain; Vimentin; 60 kDa heat shock protein; T-complex protein 1 subunit epsilon; Septin-2であった。次にこれら蛋白を認識する抗体の疾患特異性を検討するため、対照患者の髄液を用い、同じ条件下で二次元免疫ブロット法を行った。対照患者は古典型多発性硬化症20例、無菌性髄膜炎20例、身体表現性障害17例の合計57例とした。その結果、これら8種類の抗原蛋白を認識する抗体は、他疾患群においても存在し、その陽性率に有意差はみられなかった。一方、同定した抗原蛋白の機能に関しては、分子シャペロンや細胞骨格蛋白であるが、最近Tubulin beta chainがAD患者の海馬において、対照と比較し有意な発現低下を認めたとする報告や、ADモデルマウスである12月齢のAPPE693Δ-transgenic miceの海馬において、対照と比較し有意なHeat shock cognate 71 kDa proteinの発現上昇と、60 kDa heat shock proteinの発現低下を認め、AD脳の初期段階においてこれら蛋白の変動が見られる可能性を指摘した報告がある。今後、ADのバイオマーカーの確立を目指し、未同定スポットの抗原蛋白の同定と、ELISA法を用いた抗体価の測定により疾患特異性の検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
検体数の確保、二次元免疫ブロット法と質量分析による抗原蛋白同定法の確立ができており、さらなる検索に有効な状況ができている。
確立してきた二次元免疫ブロット法と質量分析による抗原蛋白同定法を駆使して,ADのバイオマーカーの確立を目指していく。具体的には、未同定スポットの抗原蛋白の同定と、ELISA法を用いた抗体価の測定により疾患特異性の検討を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
J Neuroinflammation
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10.1186/1742-2094-10-39.
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