研究課題/領域番号 |
24591257
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽根 淳 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40513750)
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研究分担者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30378012)
小池 春樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80378174)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NIID / 神経変性疾患 |
研究概要 |
我々は、常染色体優性遺伝形式をとるNIID2家系について、DNAを採取し、 Covaris S2システムを用い、物理的に100-200bpの長さに断片化し、両端にアダプター配列を付加し、フラグメントライブラリーを作製した。一部のNIIDサンプル、および正常対象サンプルは、この後に次世代シークエンサー Hiseq 2000による解析を行い、全ゲノムに亘って配列を解析する。残りのサンプルに関しては、 Agilent社の SureSelectキットを用いて、エクソン部分のみを抽出した後に、シークエンス反応を行った。読まれたDNA配列をヒト reference sequenceをもとにマッピングし、NIID例、および正常対照例の配列を比較検討することによって、発症者にのみ認められる遺伝子変異を抽出した。その後、現在データベース上に公開されているSNPに関する情報を参照し、既に報告されている正常多型と考えられるSNPを除外し、原因遺伝子候補を選び出す作業を行った。同様の作業を各家族内で行い、すべての家族に共通して認められる候補遺伝子を、原因遺伝子として抽出することを試みたが、現在のところ、原因遺伝子を絞り込めていない。そこで、次世代シークエンサーにて解析が困難とされる、繰り返し配列の延長が疾患発症の原因であるRepeat病の可能性を考慮し、連鎖解析結果、および次世代シークエンサー解析の結果、さらに、データベース上に公開されている Repeat配列の情報を基に、原因遺伝子の絞り込みを計っている。また、この疾患の原因がCNVにより引き起こされる可能性に着いても考慮し、CGHアレイを用いた解析を行ったが、NIIDの原因と成るCNVは同定されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、Neuronal intranuclear inclusion disease (NIID:エオジン好性核内封入体病)の大家系の原因遺伝子検索を、世界に先駆けて開始し、現在、第1染色体上に20Mbpの範囲で候補領域を見いだしている。この領域の遺伝子配列を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解読する事により、原因遺伝子の同定する事が、この研究の最も大きな目標である。現在までに、すでに、5名分の全ゲノム解析、9名分のエクソーム解析が終了し、データ解析も完了しているが、現在のところ原因遺伝子の同定には至っていない。一方で、一塩基多型が原因ではない可能性を考慮し、CNVを検討するために、CGHアレイを用いた検討を行ったが、原因と成るCNVは同定されなかった。そこで、200bpまでのDNA断片を、大量に、かつ網羅的に解析出来る次世代シークエンサー、 Ion Proton シークエンサーを用いてゲノム配列を読み取ることによって、CAG repeat 配列を初めとした、ゲノム上に多数存在する繰り返し配列の延長が、疾患の原因になっている可能性を疑い、網羅的なRepeat配列の解析を現在進めている。 今のところ、原因遺伝子の同定には至ってはいないが、原因遺伝子の絞り込みに関しては、着実に前進していると考えている。当初、一塩基変異が原因との予測をしていたが、それとは異なる変異が原因である可能性が明らかとなり、現在、ゲノム解析のアルゴリズムに変更を加え、一塩基変異以外のゲノムの異常について検索を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
NIIDの原因遺伝子同定を目指し、繰り返し配列の解析を進めて行く。次世代シークエンサーである、Ion Proton シークエンサーを用いて、200bpベースのシークエンスデータを蓄積し、繰り返し配列の延長の有無を検討する。 最終的にいくつかの候補遺伝子が抽出された後は、それぞれの遺伝子に関して、従来型の Sanger sequencer を用いて、NIID患者にのみ変異が認められるか否かをすべての発症者および非発症者において検討する。また、抗体が入手できる場合には免疫染色を行い、核内封入体の染色性を確認し、最終的に原因遺伝子を同定する。この手法によって、複数の遺伝子が原因として残った場合には、この家系以外のDNAサンプルにて変異の有無を検討し、絞り込む事を考えている。同定された原因遺伝子産物の抗体が入手出来なかった場合には、抗体を新たに作成し、我々がすでに4例有している剖検例と対照剖検例、さらに、核内封入体の存在が報告されている他の神経変性疾患の剖検組織を用いて、免疫染色法を用い、全身での発現状況、核内封入体内での存在様式などについて詳細な検討を行う。次に、原因遺伝子を発現させる培養細胞モデルを作成し、遺伝子産物の生理的役割、核内封入体の形成過程、分子機構、発現タンパク質の分布様式、結合様式、毒性等について解析する。さらには動物モデルの作成を行い、病態の解析、神経脱落の進行過程、また、治療法の開発を進めたいと考えている。また、剖検組織より得られた凍結標本よりタンパク質を抽出、分画し、ウエスタンブロット法を用いて核内封入体構成蛋白の解析を行い、病態発症に関係するタンパク質あるいは分子機構について、新規治療法も含めて検索する。これらにより、NIID研究、および核内封入体の病理機構解析を飛躍的に発展させ、神経変性疾患一般に広く応用可能な治療法開発へと繋げたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
Ion Proton シークエンサーを用いたシークエンス、およびSanger sequenceに関する試薬などのランニングコスト、免疫組織染色に用いる試薬類、ウエスタンブロット法を用いて核内封入体構成蛋白の解析、培養細胞モデルおよび動物モデルの作成、国際学会での情報収集および成果発表などに使用予定である。
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