研究課題/領域番号 |
24591257
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽根 淳 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40513750)
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研究分担者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30378012)
小池 春樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80378174)
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キーワード | NIID / 核内封入体 / 次世代シークエンサー / ゲノム解析 |
研究概要 |
我々は、昨年度までに、常染色体優性遺伝形式を示したNIID家系2家系について、DNAサンプルを収集、次世代シークエンサーを用いて、全ゲノムおよび全エクソン解析を行ない、得られた遺伝子の配列解析を行なっている。本年は更に1家系のNIID家系のDNAサンプルを追加し、合計3家系でのゲノム解析を行なった。 追加の1家系については、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行ない、前回と同様にヒト標準配列であるhg19をもとにマッピングを行ない、Variant情報を抽出し、発症者間で共通しているSNVを抽出した。昨年度に得られた2家系のデータと比較検討し、いくつかのSNVがNIIDの原因遺伝子と成っている可能性が高いと見込まれた為、現在、SNVが認められた遺伝子産物に対する抗体を用いて、NIID剖検組織サンプルを用いた免疫染色での検討を行なっている。さらにSNVを導入した発現プラスミドを作成した上で、培養細胞を用いた変異遺伝子の強制発現実験を行い、NIIDの剖検組織標本で認められるのと同等な核内封入体が形成されるか否かを検討している。それらの結果を基に、更に原因遺伝子の絞り込みを行なっているところである。 平行して、NIIDと類似の核内封入体を呈する、FXTAS (fragile X-associated tremor/ataxia syndrome)の様に、Repeat 配列の延長が疾患の原因と成っている可能性も考慮し、連鎖解析で得られた候補領域内のRepeat配列についても検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、常染色体優性遺伝形式をとるNIID2家系について連鎖解析を行った結果、原因遺伝子の存在領域を絞り込んでいる。今年度、更に1家系のゲノム情報を追加し、再度解析を行なった。ヒト reference sequenceをもとにマッピングし、NIID例、および正常対照例の配列を比較検討することによって、NIIDの原因遺伝子と成っている可能性が高いSNVを複数見出だす事に成功しており、NIID原因遺伝子の同定にかなり近づくことができたと考えている。 現在、それぞれの遺伝子に関して、従来型の Sanger sequencer を用いて、NIID患者にのみ変異が認められるか否かをすべての発症者および非発症者において検討している。さらに当該遺伝子産物に対する抗体を用いた免疫染色による検討を行うと共に、培養細胞を用いた変異遺伝子の強制発現実験を行なっており、最終的に原因遺伝子を絞り込んだ上で同定する事も間近と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、NIIDの原因遺伝子の候補として絞り込まれている遺伝子群の転写産物に対する抗体を用いて、免疫染色を行なって行く。また、培養細胞を用いた遺伝子強制発現実験を行なっている。これらの実験の結果、NIIDの原因遺伝子を同定する事を目指す。同定出来た場合には、原因遺伝子の生理的な機能の解析を行なうことで病態を明らかにし、根本的な治療法の開発を目指す。また、動物モデルの作成を行い、病態の解析、神経脱落の進行過程、また、治療法の開発を進めたいと考えている。また、剖検組織より得られた凍結標本よりタンパク質を抽出、分画し、ウエスタンブロット法を用いて核内封入体構成蛋白の解析を行い、病態発症に関係するタンパク質あるいは分子機構について、新規治療法も含めて検索する。これらにより、NIID研究、および核内封入体の病理機構解析を飛躍的に発展させ、神経変性疾患一般に広く応用可能な治療法開発へと繋げたいと考えている。
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