研究課題/領域番号 |
24591258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹内 英之 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (30362213)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / コンディショナルノックアウトマウス / TDP-43 |
研究概要 |
本研究では、家族性および孤発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)/前頭側頭葉型認知症(FTD)の原因タンパクであるTDP-43に対する神経特異的コンディショナルノックアウトマウスを作出することを通じて、TDP-43の機能喪失による神経変性の詳細なメカニズムを明らかにし、ALS/FTDに対する新たな診断・治療への展開を目指すことを目的としている。 これまでの報告で、古典的手法によるノックアウトマウスが胎生致死であり、また、単純な薬剤誘導性コンディショナルノックアウトマウスは脂肪代謝障害にて致死となることが判明している。これらの問題を回避しつつ、また、成人の疾患であるALS/FTDの病態を再現するために、成熟期以降のマウスにおいて任意のタイミングでTDP-43の機能喪失を検討する必要があることから、薬剤誘導性・神経特異性コンディショナルノックアウトマウスの作出を試みた。 マウス内因性TDP-43遺伝子のエクソン3~4を挟む形でloxP配列を挿入したTDP-43 floxホモマウスとタモキシフェン誘導性・神経特異性Cre(Thy1.2-Cre-ERT2)トランスジェニックマウスと掛け合わせることで、最終的に、タモキシフェン誘導性・神経特異性TDP-43コンディショナルノックアウトマウスThy1.2-Cre-ERT2/TDP-43 floxホモマウスを得た。このマウスの発育は、タモキシフェンが投与されない限り野生型マウスに比して異常は認めなかった。 0.5μモル/g体重のタモキシフェンを5日間連続経口投与することで、成熟期以降のマウスにおけるTDP-43ノックアウトを試みたところ、任意の週齢のマウスにおいて神経細胞のみのTDP-43ノックアウトが成功した。投与後4-5週間で異常行動、振戦、運動麻痺を呈し、衰弱死を呈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、成熟期以降のマウスにおいて任意のタイミングでTDP-43の機能喪失を可能とする、薬剤誘導性・神経特異性TDP-43コンディショナルノックアウトマウスの作出が成功した。
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今後の研究の推進方策 |
作出したTDP-43ノックアウトマウスの表現型について、①臨床的な病勢経過の観察や、活動量の変化や運動機能検査、記憶テストなどの行動解析 ②脳内マイクロダイアリシス-リアルタイムHPLCによる神経伝達物質の変化量の直接解析 ③MRIによる中枢神経系の経時的な器質的変化の解析 ④免疫学的手法を用いた生化学的、組織学的評価、などを用いて総合的かつ詳細に判定する。 また、TDP-43ノックアウトマウスから、大脳皮質、海馬、脊髄をトータルRNAを採取し、発現プロファイルの変化を定量比較することで、TDP-43機能喪失のダウンストリームを解析し、神経変性のメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画を遂行するに当たり、細胞培養およびマウス管理に対する消耗品費、RNA発現プロファイルの網羅的解析の外注委託費として主に使用する。
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