研究課題
孤発性ALS患者脊髄(n=4)とコントロール脊髄(n=5)からmRNAを抽出し、マイクロアレイを用いてALS患者の変動遺伝子を抽出した。低発現遺伝子を除去して1.8倍以上の変動を示す遺伝子を抽出した後、t検定により孤発性ALSの脊髄で有意(p<0.05,多重検定補正あり)に変動している197個の遺伝子を同定した。この段階では変動遺伝子が脊髄を構成する細胞種(主に、神経細胞、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)のうち、mRNAの変動がどの細胞種の関与によるかは不明である。マウスの全遺伝子の細胞種ごとの相対的発現レベルがわかるトランスクリプトームを一部データベースを利用して作成してGeneSpring_GX(Agilent社)によりマウスとヒト間での相同遺伝子の変換することにより、ALS患者脊髄のmRNAの変動が、主にどの細胞種の関与によるものかを推定することが可能となった。その結果、孤発性ALS脊髄で変動している197遺伝子のうち約半数はミクログリア又はアストロサイトのグリア系細胞により豊富に発現する遺伝子であることが判明した。ALS患者脊髄で変動している遺伝子でミクログリアに発現が多いものから、ALS病態との関連で機能的に興味深いCLEC7A、GPR65、NOX2について、ALSモデルマウス脊髄の免疫染色により、主に発現している細胞種がミクログリアであることと発現の増加をタンパク質レベルでも確認した。また、ALS患者脊髄で変動している遺伝子でアストロサイトに発現が多いものからは、CHI3L1、OSMR、CEBPD、CNN3について同様に免疫染色により、主に発現している細胞種がアストロサイトであることと発現の増加を確認した。本研究では、ヘテロな細胞集団である脊髄全体を用いたマイクロアレイデータから、構成細胞種を考慮した、より詳細で有用な解析方法を提示できた。
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