研究課題
パーキンソン病(PD)は “①中脳黒質のドパミン(DA)神経の変性脱落”,“②α-synuclein(αsyn)を主要構成成分とするLewy小体の出現”を病理学的特徴とする.PDの病態には遺伝的要因と後天的要因の両者が関与するとされ,前者の代表的なものとしてαsyn遺伝子の点変異や同遺伝子領域の重複による遺伝性PDが知られている.さらにαsynは前述の遺伝性PDのみならず,一般的な弧発性PDにもLewy小体形成という点で病態に深く関与しており,PD病態を把握する上で最も重要な分子といえる.PD関連病態において,αsynの過剰発現状態がDA神経特異的な病理変化をもたらす理由についてDA神経特異的なタンパク質翻訳後修飾の観点から検討した.PDにおけるαsyn関連病態にはDAをはじめとするカテコールアミン(CA)によるαsyn修飾があると仮説を立て,これを明らかにする為に,薬剤で発現量を調節できるPC12-αsyn-TetOFF細胞を構築し,DA関連翻訳後修飾と細胞毒性の研究を行った.これまでに CA存在下では,αsynメチオニンの酸化修飾(メチオニンスルホキシド)を生じやすく,特に127番メチオニン残基がその主要な酸化ターゲットであること,周辺の125番チロシン残基,129番セリン残基は間接的に127番メチオニン残基のCA依存的な酸化修飾を促進することを明らかにし,これがαsyn重合化および細胞毒性のトリガーとなることを明らかにした.さらにメラトニン,セロトニン,ポリフェノール類(クロロゲン酸,アスパラチン,他)がこのαsyn酸化修飾を軽減することで,細胞保護的に作用することを見出した.また,酸化メチオニン還元酵素A(メチオニンスルホキシド還元酵素:MsrA)がCA存在下でαsynと結合していることから,MrsAの活性化も新規治療ターゲットとなりうると考えられた.
2: おおむね順調に進展している
前年度の,「モデル細胞構築」と「ドパミン存在下におけるαsynの毒性機序解明」に続き,それをターゲットとした細胞保護成分の検索と,そのメカニズム検討を行えたため.また,酸化メチオニンを還元するメチオニンスルホキシド還元酵素AがDA存在下においてαsynと結合していることを明らかにし,酵素によるメチオニン還元が治療のターゲットとなりうる可能性を発見した.
αsynのメチオニン酸化修飾を軽減する成分をさらにスクリーニングし,細胞保護のメカニズムを検討する.MsrAの活性化は酸化メチオニン軽減に直結すると予想される為,MsrAの発現量増加を促す薬剤等をスクリーニングする.それに先立ってMsrAの発現量を調節するメカニズムの検討を行う.マウスPDモデルを用いた検討は現時点では不十分である.過剰なDA(DOPA)やレセルピンを投与したモデルマウスにおいてαsynの酸化修飾状況の検討を行う.
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Biochem. Biophys. Acta
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10.1016/j.bbadis.2014.04.008.
J. Neurosci.
巻: 33 ページ: 14767-14777
10.1523/JNEUROSCI.2954-12.2013.