研究課題
神経変性疾患研究においては,なぜ特定の神経群で選択的な細胞死が生じるかと言う点に注目が集まっている.パーキンソン病(PD)は“①中脳黒質のドパミン(DA)神経の変性脱落”,“②α-synuclein(αsyn)を主要構成成分とするLewy小体の出現”を病理学的特徴とする.αsynは家族性PDおよび弧発生PD両者に関わる重要な病態関連分子である.αsynの過剰発現状態がDA神経特異的な病理変化をもたらす理由についてDA神経特異的なタンパク質翻訳後修飾の観点から検討した.PDにおけるαsyn関連病態にはDAをはじめとするカテコールアミン(CA)によるαsyn修飾があると仮説を立て,PC12-αsyn-TetOFF細胞を構築し,DA神経特異的な翻訳後修飾と細胞毒性の研究を行った.これまでに CA存在下では,αsynメチオニンの酸化修飾(メチオニンスルホキシド)を生じやすいことを明らかにし,これがαsyn重合化および細胞毒性のトリガーとなることを明らかにした.さらにメラトニン,セロトニン,ポリフェノール類(クロロゲン酸,アスパラチン,他)がこのαsyn酸化修飾を軽減することで,細胞保護的に作用することを見出した.また,上述PDモデル細胞において,酸化メチオニン還元酵素A(MsrA)がCA存在下でαsynと結合していることを見出した.マウス脳内では,黒質,線条体,嗅球などカテコールアミン代謝と関係の深い部位において,MsrAの発現が多いことを明らかにした. 培養細胞ではMsrAのノックダウンにより細胞毒性が増加した.これらのことから,MrsAの活性化も新規治療ターゲットとなりうると考えられた.
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Hum Mol Genet
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Biochim Biophys Acta (Mol Basis od Dis)
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