研究課題/領域番号 |
24591263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池田 佳生 岡山大学, 大学病院, 講師 (00282400)
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研究分担者 |
倉田 智子 岡山大学, 大学病院, 助教 (40598562)
森本 展年 岡山大学, 大学病院, 助教 (60598556)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊髄小脳変性症 / SCA36 / NOP56 / GGCCTGリピート / 運動ニューロン疾患 / RNA gain-of-function / 難聴 / オージオグラム |
研究概要 |
spinocerebellar ataxia type 36 (SCA36)の臨床的・病理学的特徴を明らかにするため、NOP56遺伝子イントロン1におけるGGCCTGリピート異常延長を認めたSCA36/Asidanの11家系16名の患者の臨床所見、電気生理学的検査、筋生検所見、聴覚機能検査、嚥下機能検査、脳画像検査、認知機能検査、剖検脳の病理所見につき解析した。SCA36/Asidan患者の延長GGCCTGリピート数はサザンブロット解析にて1700-2300リピートであった。平均発症年齢は53.1歳で、殆どの患者は小脳失調で発症し、四肢の腱反射亢進は79%に認めた。舌萎縮・線維束性収縮は71%に、四肢の筋萎縮・線維束性収縮は57%に認め、これらの下位運動ニューロン徴候は罹病期間10年以上の患者で特に目立っていた。筋電図では脱神経所見を認め、筋生検では群集萎縮や小角化線維などの神経原性所見を認めた。また聴力低下の頻度も高く(69%)、オージオグラム解析での平均聴力レベル(PTA)は42.9dBであり、他の小脳失調症と比べて有意な聴力低下を認めた。嚥下造影検査(VF)と舌圧測定器を用いた嚥下機能検査では、SCA36/Asidan患者の嚥下障害度はALS患者よりも軽度であった。脳画像検査では発症早期には比較的小脳に限局した萎縮を呈し、罹病期間の長い患者においては脳幹萎縮や前頭葉を主とした大脳萎縮を認めた。認知機能検査では前頭葉機能低下を認めた。神経病理学的には、プルキンエ細胞や小脳歯状核ニューロンの顕著な脱落を認めたが、橋底部および下オリーブ核の神経細胞は保たれていた。また、舌下神経核や脊髄前角の運動ニューロンの顕著な脱落も認めた。NOP56/TDP-43/ataxin-2免疫染色では残存神経細胞に細胞質内もしくは核内の封入体形成を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
spinocerebellar ataxia type36 (SCA36)の臨床的特徴および病理学的特徴を明らかにし、その基礎病態についても新たな知見を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
SCA36おける延長GGCCTGリピートをクローン化するため、SCA36患者リンパ芽球由来のDNAを用いてBAC(bacterial artificial chromosome)ライブラリーを作成し、そこから延長GGCCTGリピートを含んだNOP56遺伝子領域および前後の遺伝子調節領域を充分含んだ病的アリル由来の染色体断片をクローン化したBACを探し出し、培養細胞モデル・マウスモデル作成のためのコンストラクトとして使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究推進が順調に進展したため、平成24年度経費の一部を繰越して平成25年度分の経費と合わせて請求する。上記の研究推進のために用いる試薬やプラスチック器具類は平成25年度に大量に必要となるため、平成25年度経費はこれらの消耗品費が大きな割合を占めている。また平成25年度に2回ほどの調査・研究および研究成果発表のための旅費が必要となる見込みである。
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