研究課題
G蛋白質共役型受容体(GPCR)はヒトでは約1400種存在すると推定されており、様々な細胞内伝達物質の制御に関連していると考えられている。申請者はこれまでに、中枢神経系に豊富に発現するGPR3・GPR6・GPR12の中枢神経における機能を解明してきた。本研究の目的は、虚血性脳障害の新規治療法開発を目指して、神経発生過程におけるGPR3の発現と神経細胞の分化・成熟・シナプス形成に関わる機能を詳細に解析し、GPR3遺伝子導入が新生神経細胞の分化に与える影響を検討することにある。研究代表者らは、まずGPR3ノックアウトLacZノックインマウスを用いて、脳におけるGPR3のプロモーター発現分布を詳細に解明した。さらに、GPR3と蛍光タンパク質の融合蛋白を発現するベクターを構築し、標識蛍光蛋白を用いた局在解析を行い、小脳顆粒神経細胞においてGPR3融合タンパク質は細胞膜、ゴルジ体、エンドソームに存在することを明らかにした。また、GPR3融合タンパク質小胞が神経突起内を経時的に移動することも新たに発見した。GPR3融合タンパク質小胞の移動は、ミオシンII の阻害剤であるブレビスタチンにより抑制され、キネシンⅤの阻害剤であるモナストロールでは抑制できなかった。さらに、神経突起先端部でのGPR3融合タンパク質の蛍光は、ブレビスタチンにより有意に抑制された。次に、GPR3の細胞内局所での機能を明らかにするため、PKAのFRETインジケーターを用いた検討を加えた。小脳顆粒神経細胞において、GPR3過剰発現により神経細胞体、突起先端でのPKAの活性が上昇し、GPR3siRNAによる内在性GPR3発現抑制により、神経突起先端部での著明なPKA活性低下を観察した。また、ブレビスタチン投与にても、神経突起先端部での著明なPKA活性低下を観察した。以上の結果から、GPR3は神経細胞の分化において、神経突起先端に運ばれ、局所でのPKA活性化に寄与し、神経極性形成に関与する可能性が明らかとなった。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Front Physiol
巻: 5 ページ: 126
10.3389/fphys.2014.00126. eCollection 2014.
Neurobiol Dis
巻: 68C ページ: 215-227
10.1016/j.nbd.2014.04.007. Epub 2014 Apr 24
http://home.hiroshima-u.ac.jp/yakuri/