研究概要 |
アルツハイマー病動物モデルマウスのAPP トランスジェニックマウスにAβ1-42ペプチドと完全Freund アジュバントで免疫し、そのリンパ節、脾臓および脳からT細胞クローンを樹立し、現在脳炎惹起性(Th1/17)および脳炎非惹起性(Th2)の性格付けの実験を行った。T細胞クローンからは炎症性サイトカイン(IFN-γ, IL-1, IL-12)や抑制性サイトカインなどの分泌をELISA法で測定し、T細胞クローンごとに異なったパターンを示していた。4匹のマウスのうち著明なリンパ節肥大や脾臓腫大は2匹に認められ、そのマウスからは、炎症性サイトカインを分泌するより多くのT細胞クローンが樹立することができた。 同時にAPP トランスジェニックマウスの自己免疫性脳脊髄炎の発症状態の解析のために脳組織中のサイトカインをELISAで定量的に測定し、組織免疫染色により各炎症性蛋白や炎症性サイトカインの分布を解析した。その結果、アストロサイト周辺にはIL-1, IL-6とともにIL-4, TGF-β等の発現も認められた。一方ミクログリアからはIL-2, IL-6 IFN-γ等の炎症性サイトカインが多く認められた。脳老人斑の量は定量的に解析しても、有意な減少傾向は認められず、これは比較的年齢が若いマウスを用いたためと考えられた。血管壁のAβ沈着は残存していた。一方、神経原線維変化には大きな変化は認められなかった。 今後は高齢のアルツハイマー病動物モデルマウスにAβペプチドを免役し脳炎を惹起させ、この新たな免疫抑制因子であるSPARC/osteonectinを用いて、免疫反応の抑制、脳炎の改善効果などの解析を行う予定である。実際にはAβペプチドとアジュバントで免疫した後に、recombinant SPARC/osteonectinを腹腔投与し、脳の炎症状態の解析の変化とリンパ節や脾臓由来のT細胞クローンのサイトカイン産生のレパートリー変化を解析する。
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