研究課題
昨年度の成果を報告した (Clin Exp Neuroimmunol 2014;in press)。Actin polymerizationと密接に関係する細胞内cAMP濃度の制御は治療法の開発に繋がる可能性と本研究をさらに展開させるために、本年度は細胞内cAMP濃度を増加・減少させる各種薬剤を使用し、昨年度と同様に混合培養系 (HTLV-I感染T細胞株;HTLV-I感染効率のいいHAM患者由来HCT-5および対照株として感染効率が悪いHTLV-Iキャリアー由来TL-Su。非感染細胞株;H9/K30 luc細胞) を用いて検討した。(結果.1)増加させる薬剤(phosphodiesterase inhibitor; pentoxifyllineまたはcilostazolまたはrolipram) 処理HCT-5とH9/K30 luc細胞との混合培養下での検討では感染効率が減少傾向にはあったものの有意な変化は得られなかった。逆に減少させる薬剤adenylyl cyclase inhibitorであるSQ22536処理TL-SuとH9/K30 luc細胞との混合培養下での検討でも感染効率に有意な変化は得られなかった。そこで、細胞内actin polymerizationを増強させる別の因子であるSDF1/CXCR4シグナルに着目し、同様に混合培養系でHTLV-I感染効率を指標に検討を行った。(結果.2)1. HTLV-I感染効率が悪いTL-SuではSDF-1存在下の培養系でHTLV-I感染効率が有意に上昇した。2. CXCR4ブロッキング抗体にてHCT-5を処理すると、感染効率が有意に低下した。(まとめ)HAMに対する治療の観点からcAMP濃度を変化させ得る薬剤でのHTLV-I感染効率の検討では、有意な結果は得られなかった。これら薬剤処理の実験では薬剤の細胞内へのアクセスの問題等があり、細胞内cAMP濃度にあまり変化がみられず、今後は実験系の検討が必要である。しかし、HAM患者HTLV-I感染細胞ではSDF-1/CXCR4シグナルの活性化も細胞内骨格再構成シグナル伝達機構の異常に関与している可能性が考えられた。
3: やや遅れている
HAM患者HTLV-I感染細胞の細胞内骨格再構成に関与する因子として、昨年度報告した細胞内cAMP濃度以外にSDF-1/CXCR4シグナルの活性化も関与している可能性を示した。しかし、本年度内にこれらのシグナル分子とHTLV-I感染細胞の組織浸潤能との関係については明らかにすることが出来なかった。
次年度以降は上記に述べたように、cAMPおよびSDF-1/CXCR4シグナルとHTLV-I感染細胞の組織浸潤能との関係を解析すると共に、形態学的にも、actin polymerizationとの関係を明らかにしていく。さらに、HTLV-I感染細胞株での解析成果を、末梢血レベルでの解析に展開させる。
本年度はHTLV-I感染細胞の組織浸潤能との関係についての解析に着手できなかったため、本実験に関係する試薬類などの購入が成されなかった。上記研究の解析に必要な試薬類、また形態学的解析および末梢血での解析に必要な試薬類・抗体類の購入のために使用する。
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