研究課題
申請者は細胞内骨格再構成シグナル異常がHAM発症に関与する一因と考え、HTLV-I感染伝播効率との関係から研究を遂行してきた。その結果、昨年度までに細胞内骨格再構成において最も重要な役割をはたしているactin polymerizationをVASPのリン酸化を通して制御している細胞内cAMP濃度がHTLV-I感染伝播効率を規定する一因となっていることを明らかにした(Clin Exp Neuroimmunol 5:209-215, 2014)。さらに、細胞内actin polymerizationを増強させる別の因子であるSDF1/CXCR4シグナルもHTLV-Iの感染伝播効率を制御していることを明らかにした。すなわち、HAM患者HTLV-I感染細胞ではこれらの細胞内骨格再構成シグナルが活性化していることが明らかにされた。本年度は1)上記事実に関与するシグナル系の解析 2) 治療法開発 の観点から各種薬剤を用いて検討した。解析は昨年度までと同様の実験系を用いた。(結果)1. cAMP添加時ではその感染効率が有意に低下した。cGMP添加では効果は得られなかった。2. しかし、細胞内cAMP濃度を増加させるpentoxifylline+cilostazolまたはpentoxifylline+rolipramまたはticlopidine処理では、有意な変化は得られなかった。3. 逆に、adenylyl cyclase inhibitorであるSQ22536あるいはMDL-12,330A処理においても有意な変化は得られなかった。4. VASPのリン酸化を抑制することによって感染効率をよくすることが予想されるPKA inhibitor H89処理においても有意な変化は得られなかった。(まとめ)今年度の検討において、細胞内cAMPはHTLV-Iの感染伝播効率を制御する分子であることが確認された。しかし、細胞内骨格再構成シグナルへの介入によるHAMの治療法開発へ向けた基礎的解析では、有意な成果は得られなかった。今後は実験系の検討が必要である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
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