研究課題
基盤研究(C)
プリオン病は近年、MRI拡散強調画像による診断法の急速な進歩、髄液生化学マーカー診断法の開発が行われ、診断法は急速な進歩を遂げている。しかしながら今までの生化学マーカーは、急速な神経細胞変性などを反映するために、異常プリオン蛋白(PrPSc)の存在を直接証明する方法しか確定診断として認めていない。依然として病理診断のみが確定診断と認知されている。従って、治療を視野に入れた生前確定診断法は、侵襲の大きい脳生検しかない。今回、我々はPrPScのin vitro増幅法(Real-time (RT)-QUIC法)を開発し、少数例ではあるが、PrPScの試験管内増幅に成功し、国内外で高く評価されている。このRT-QUIC法を用いた国内外遺伝性プリオン病の検体を用い、従来から種々の生化学的マーカーを比較検討し、遺伝性プリオン病の診断法の確立を目指す。さらに遺伝性プリオン病に関する新たな分類・解析を目指す。1)髄液の生化学診断の全症例検討本邦CJDサーベイランス委員会によって集積された検体を用いたプリオン病の診断法としての標準化14-3-3蛋白、タウ蛋白測定による髄液診断法の国内標準を確立させる。現在、WB法しか普及していない14-3-3蛋白測定について定量性のあるサンドウィッチELISA法での解析を行う。特にCJDの診断に臨床情報、髄液の生化学的なマーカーを詳細に解析し、QUIC法による異常プリオン蛋白検出と比較検討に供する。2)RT-QUIC法の確立我々の開発したin vitro PrPSc増幅法を用いて確定診断法の確立を行う。特に多数の髄液検体を解析し、感度・特異度を決定すると共に、髄液中PrPScの濃度をRT-QUIC法により定量化し、その値とプリオン病の進行度の関連についても検討する。
1: 当初の計画以上に進展している
平成24年度の目標であった1) タウ蛋白14-3-3-蛋白測定のELISA法の作成・確立:初年度は髄液中の14-3-3-蛋白のアッセイとして抗14-3-3抗体を4種類作成した。昨年度よりELISA系の開発を行っている。ウエスタンブロット法とELISA法との比較検討を行う。本年度ELISA系の開発に成功し、多数例での検討に入った2) 髄液のタウ蛋白・14-3-3蛋白測定による診断法確立のためのデータ標準化:標準化できた測定法を用いて、プリオン病の病型ごとの標準値を明らかにする。孤発性CJD、家族性CJD、硬膜移植後CJDに分類しそれぞれの病型での標準値を決定する。現在国際的な標準化に向け、他の国々との間にて標準化を始めた。本年度遺伝性プリオン病の髄液解析は諸外国との協力を得て、多数例での検討を行う事が可能となった。論文を投稿し、Acceptされている。さらに病理所見と発症時期と髄液のバイオマーカーとの関連性を検討しはじめている。3) in vitro PrPSc増幅法(QUIC法)による診断法開発:QUIC法は、リコンビナントプリオン蛋白(rPrP)を反応基質として用い、異常プリオン蛋白(PrPSc)をin vitroで増幅する方法である。サンプルが多数の場合でも非常に簡便に、かつreal-timeに測定可能なシステムを構築することが可能となった(RT-QUIC法、2011 Nature Medicine)。予備的結果ではあるが、definite cases 18症例でのCJD患者由来の髄液中のPrPScを増幅することに成功し、その中には髄液中の14-3-3蛋白陰性かつ総タウ蛋白陰性症例も含まれており、そのプリオン病の診断への有効性が期待できる。
1)プリオン病患者の髄液中の異常プリオン蛋白の半定量RT-QUICをさらに利用し、髄液中のPrPScの半定量の試みを開始している。ヒト脳の異常プリオン蛋白の半定量化したサンプルを髄液と同時にアッセイをし、ある程度の定量に成功している。又希釈し、SD50の測定も成功している。これをend-pointアッセイ法として確立する。さらに髄液での有用性を検討する。2)遺伝性プリオン病に関する新たな分類・解析現在まで遺伝子プリオン病に関する情報は約100症例程度あり、すでに詳細な患者情報・遺伝子検査の情報はもっているが、再度サブ解析を行う。さらに髄液検査データに基づき今まででのデータを解析する。一方でその解析に基づく遺伝子サテライト領域及び連鎖解析を行う。もしも可能であれば今まで報告されている遺伝子改変ノックインマウスの解析を同時に行う。
1)現在プリオン病患者の髄液中の異常プリオン蛋白の半定量についてはかなりの症例における検討が進んでおり、投稿準備中であり、追加実験等に利用する予定である。2)遺伝子改変ノックインマウスの作成のために研究費を利用する。3)現在プリオン病患者の髄液と発症時期との関連性の検討本年度遺伝性プリオン病の髄液解析は諸外国との協力を得て、多数例での検討を行う事が可能となった。さらに病理所見と発症時期と髄液のバイオマーカーとの関連性を検討しはじめている。
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